ストーリーテラー

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何でもない話なのに、いつも話が面白い人がいる。その人と同じもの見、同じことを聞いたはずなのに、自分が話すと今一つ感じてもらえない、こんな思いをしたことも一度や二度ではない。

彼らに共通するのは、意味付けの巧みさである。一つ一つは無機質な情報に意味をつけ、それを一つの物語として紡ぐことで、聞き手はワクワクし、引き込まれるのだ。記憶に焼きつけたり、情熱に火をつける時、聞き手を引きつけることが出来るこうした「ストーリーテラー」が果たす役割は大きい。

桃太郎の話を作った人もストーリーテラーと呼べるだろう。桃太郎には案外多くの人や動物やキーワードが登場するが、ほとんどの日本人がそれら全てを覚えている。しかし「二人の年寄りと桃と子供と3種類の動物と島と化け物」を片っ端から覚えるという作業は苦痛以外の何物でもない。また、戦国時代や幕末から維新期にかけての歴史に強く共感する人が多いのは、故・司馬遼太郎氏を始めとする偉大な歴史小説家が大きく寄与していることは想像に難くない。

高1の私の英語を担当していたジミーも、私にとっての偉大なストーリーテラーだった。なけなしの小遣いをはたいてレンタルCDを借りては録音するという、どこにでもいる貧乏高校生だった私は、ニューヨークに足しげく通い、行くたびに洋楽のCDを50枚単位で大人買いするジミーの武勇伝に胸を高鳴らせた。そのとらわれない、自由な生き方にあこがれ、真似したがった。モノマネをする為に、どんな言い回し、話し方でジミーが話すのかを友人と徹底的に研究し、ジミーの口調を真似ながら単語や熟語を覚えた。彼にとっては苦しいことであったろうが、不運にもスキーの事故で腎臓の一つを失ったことすらカッコよく思えた。

ジミーは私に英語も勿論教えてくれたけれど、それよりも英語で海外に繋がることの楽しさを伝えてくれた。この人みたいに軽やかに、楽しそうに生きたい、そのために英語をもっとできるようになりたいと、初めて心の底から思ったのはジミーに会ってからだった。私にとってジミーは、海外に目を向けさせてくれた最初のストーリーテラーだった。

ジミーの薫陶を受けていながら、英語を使いこなせるようになったとは残念ながらまだ言えません。けど、今では俺も若者たちに伝える側に立って奮闘してるんだ。ジミーが俺にくれたようなワクワクをあげられているかは分からないけれど。

 ありがとう、ジミー。さようなら。


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