成長の尺度
いかに成長すべきか―
この問いは人類に課された永遠の課題ともいえる。有史以前に人類が誕生してから絶えず、「今よりもいい状態にする」ための工夫を積み重ねて、2009年の今がある。はたから見れば、恵まれた境遇とはいえず、才能にも恵まれてもいないように見えても、輝いている人がいる。一方、金銭的には何不自由ないはずの人、一つの分野で類稀なる才能に恵まれている人、あるいは見た目もカッコよく多様な才能を持ち合わせている人が、決して幸せそうに見えないこと、は枚挙に暇がない。 この差はおそらく自分はどんな方向に成長していくのか、ということが見えているか否かの差にあると思う。
成長の尺度を自分で決める。こんな当たり前のことが先行き不透明な21世紀では、ますます問われる。なぜなら、社会で評価される尺度は目まぐるしく変わってしまうからだ。未来は過去の延長線上にあるものではなくなり、よく言われる「不連続の時代」に入った。
日本でも1990年代初頭にバブルが弾けて以降、信用ある会社の代名詞であった金融機関は次々と姿を消した。金融機関だけでなく、メーカーや小売業を含めて名だたる大企業がいくつも姿を消した。また、史上最高益を更新したことを発表した企業が数か月後に倒産する。それまでは信用の証であった「上場」や「業歴」「決算」といったものが、それだけでは信用の証とならなくなったのである。同じようなことは世界中に起こっている。
こうした時に大切になるのは、過去の実績ではなく、今直面している世の中を自分なりに分析をし、未来の青写真を自分なりに定義することである。
親に言われたから、みんなが行くから、周りから褒められるから、高校や大学に進学する、「いい企業」に入る、将来食いっぱぐれの無いように資格を取得する。こうしたこと自体が悪いわけではない。だが、重要なのは動機である。「何のために」という自分の尺度を持って自分の行動を決める。言うまでもなく、その結果は誰も責任を取ってくれない。あくまでも自己責任である。けれども、周りの尺度を鵜呑みにしたとしても、その結果は誰も保証してくれるものではない。しかもそれがうまくいく確率は、今後下がる一途をたどっていくことになろう。
人から与えられた「出来合いの尺度」を追求することは、過去の延長線上に未来を位置づけることと同じである。そしてその考え方では21世紀を楽しく過ごすことはできない。不連続な成長ステージに入った今、自分の価値観を持ち、自分が追求すべき尺度を確立することが大切である。
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人の成長を支援する「洋々」GM。経営コンサルティング会社A. T. Kearneyにて、Managerとして金融機関を中心に数多くのコンサルティングを手掛ける。また、採用担当者として多くの面接を行うと共に、コンサルタント向け研修プログラムの作成、実施にも深く関わる。金融専門誌への執筆多数。慶應義塾大学経済学部卒。ミシガン大学ビジネススクール・MBA Essential program修了。