第44回:変化(その2)

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 船の上では、当たり前のように外国人たちと話します。「最近どうよ?」「昨日の夜なにしてた?」といったカジュアルなものから、各国それぞれが抱える問題についての白熱した議論まで。そんな中で、やはり「自分の意見を持つ」ということは、非常に重要になってきます。

 日本人は協調性を重んじる意識があり、相手のことを思い切り否定することは、できればあまりやりたくない。私もこの事業に参加するまでは、そんな典型的な日本人でした。その理由を考えてみると、これまで部活という厳しい縦社会の中に身を置き、何を言われても、それがどんなに理不尽でも、返事は「はい」としか言えないような(笑)、そんな生活を送ってきました。(って言うと、顧問からは「大袈裟だろ!」と怒られ、また「はい、すみません!」と謝る、その繰り返しなのです…。)

 そんな「ノーと言えない日本人」タイプだった自分が、「ノーと言うことの大切さ」に気付いたのは、船上で企画・開催したSWYCup(サッカーのワールドカップ)がきっかけでした。外国人の青年たちは、大会の運営方法や試合中の審判に対しても、自分の意見をどんどんぶつけてきます。クレームの中にも貴重な意見はありますし、そこを拾い上げて反映させて行くように意識はしていたのですが、さすがに次から次へと来られても対応できません(しかもみんな粘り強いんだ、これが)。

 日本人の場合は、曖昧に濁せばその場の空気を感じ取って引き下がったりしてくれますが、外国人相手の場合そうはいきません。受け入れられない時は、きっぱりと「ノー」と言うこと。はっきりと表す方が、向こうも理解してくれます。おそらくビジネスで海外企業との交渉を行うときなども、同様だと思います。

 ただしこれもバランスが大事で、はじめから頭ごなしに否定しては、先ほど言ったように貴重な意見まで見逃してしまいます。「ノーと言う日本人」ではなく、「ノーと言える日本人」それくらいの意識が必要なのかもしれません。

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷晃毅