第51回:人生を変えた出会い(その1)

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いまから、ちょうど一年前。世界船事業を通して得た出会いが、僕の人生を大きく変えました。当時の日記を読み返していて、色々と思うところがあったので、ここに載せてみようと思います。

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2010/3/24

“人は、人との関わりで成長する。”
そんな言葉をどこかで聞いた気がしますが、今回の事業は、そのプログラム内容や訪れた場所だけでなく、参加している「人」にも刺激が溢れていました。
皆本当に個性的で面白い人たちばかりだったけど、中でも特に俺にとって、「人生を変える出会い」がありました。

日本参加青年でも、外国参加青年でもない。
まさかのスタッフ?船のクルー??

いやいや。

ギリシャ人のアドバイザー、Vasilisです。

彼は、俺が所属していたディスカッションコース(CSR)担当のアドバイザーで、いわゆる教授的な立場の人。
最初はそんなに仲良いわけではなかったけど、ディスカッションの途中、皆が睡魔に襲われたときに頼まれて空手エクササイズ的なことをしたり、個人的にコースについての意見を聞かれて辛口コメントしたり、気がついたらかなり仲良くなっていました。旅の最後の方になると、こっそり彼の豪華な部屋に入れてもらい、他のアドバイザーたちも含めて飲んだりもした。笑

彼とは難しい話からボーイズトークまで、本当にいろいろな話をしました。彼自身、十数年前にこの事業に参加したOBなので、俺ら参加青年の気持ちをすごくわかってくれ、将来の相談にも乗ってもらったり。俺のことを非常に買ってくれて、何かあるたびに「I’msoproudofyou!!」と言ってくれました。笑

そんな彼の影響は、船の中だけで終わらず…

「お前をギリシャに招待したい。俺が推薦状を書いて、全部話をつけてやる。」

そう言われたのは、たしか船を下りる直前。
そのときはただの社交辞令くらいに思っていたのですが、事業が終わった翌日、Skypeで話しているうちに気づきました。

どうやらやつは本気らしい、と。

彼はギリシャの環境省に勤めていて、若くしてIT部門のトップに就いています。見た目はノリのいい陽気なおっちゃんだけど、実は相当すごい人らしく、あちこちにコネもある。

「ギリシャでインターンシップをしたい。」

俺がそう言い出した時には、すでに彼はギリシャで動き始めてくれていました。いくつかの企業やNGOに連絡を取り、インターンシップなどの情報を集め、なんと大使館に勤める友人にも連絡してくれたそうです。
ニュースでも話題になっているように、ギリシャはいま、深刻な経済危機。だからこそあえてギリシャを選ぼうと思った。難しい状況だからこそ、学べることはきっと多いはず。

そして2日後には、メールで推薦状が送られてきました。暫定的なものですが、渡航中に大学の公欠を取るときや、秋からの就職活動で企業に提出する際など、俺の好きなように使えばいい、と。

あとは俺が乗るか、乗らないか。

「行きます。」

そもそも海外でのインターンシップは、行きたいとは常々思っていたものの、資金面や手続きなど問題が山積みで、ほぼ無理だと諦めていました。
そんな心の奥底に閉まっていた夢が現実味を帯びた時点で、俺の答えは決まりました。

こんなチャンス、もう二度とない。いま行かずに、いつ行くんだ。

もともと優柔不断なタイプ、それを俺自身よくわかっているので、あえて即答。もう後戻りはできないという状況に、真っ先に自分を追い込みました。

当然、体育会は退部することに。
先週末、主将と面談。翌日には監督の会社を訪れ、面談。そして今日、日吉の道場へ行き、部員にも挨拶してきました。
これで正式に、退部。いままで復帰を勧めてくれていた人たちには本当に申し訳ないのですが、中途半端は許されないのが体育会。それに、俺も中途半端は嫌いです。
辞めることに、悔いはありません。団体戦メンバーにも選ばれることができたし、早慶戦も勝てて、全日本で武道館のコートに立つこともできました。自分で決めた期間、精一杯やりきった自信があります。

だから、悔いはないです。

もちろん空手自体をやめるつもりはありません。空手は生涯スポーツだし、社会人になってから、あるいはもっと歳をとってからまた試合に出るかもしれないけど、今の段階では未定。もともと母校の中学・高校で教えたり、地元の道場でチビっ子たちに教えたりもしているから、これからはそっちに力を入れてやっていきたいと思います。

空手を「教える」ことの楽しさを再認識できたのも、船のおかげかな。

ひとまず、現役は引退。良い指導者になれるように頑張ります。
そして、ギリシャでのインターンに向けて、より一層勉強に力を入れます。

もうひとまわり、ふたまわりも、自分を磨きたい。もっともっと、多彩で幅のある人間になりたい。

残り2年間の大学生活。

新たな次の目標が、できました。

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(続く)

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷晃毅