第684回:勝負

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「強い奴が強いんじゃない、勝った奴が強いんだ」とはよく言ったものだ。一番努力した奴、でも、当日一番調子がよかった奴でもない。増してや世界ランキング1位や前回チャンピオンでもない。ただこの戦いで勝った奴が強いのだ。
オリンピックなんかの大舞台での戦いを見ていると、この真理が心に沁みる。前評判で「強い、絶対金メダル」と言われていた人が負けたり、ちょっとした運や気持ちのブレなんかですぐそこに見えていた勝利が手からすり抜けていく場面を見て、とても沁みる。この一勝が、あるいはこの一敗が、もっと言えばその一瞬の運やブレが、今後の人生を大きく左右するはずだ。
少し視点を変えると、「強い」と言われていた奴が勝つことの難しさも知る。周りから”普通にいけば“優勝するでしょ、と思われている人も、本人にしか分からないプレッシャーの中、崖っぷちの勝負をしているのだ。その中でちゃんと勝ち切る凄さを僕らは改めて認識すべきだろう。
そして逆に言えば、その「強い」奴を倒した奴がいる。前評判で「少し厳しいか・・・」と言われていた人が運を味方にして、一瞬のスキをついて、勝利をもぎ取っていくこともあるのだ。だから、「誰にでも」というのは少し言い過ぎも、それなりの選手には皆チャンスがある。栄光と挫折が、希望と絶望が表裏一体、いかにもスポーツで、それこそが価値であり面白さだろう。
柔道競技は今日で3日目。またドラマが生まれて、色々な感情を味わわせてくれるはずだ。ぜひ皆さんもご賞味あれ。