第199回:ジムのセンス
ゴールド・ジムのウエイトルームにはいくつかのテレビが設置されていて、だいたいいつも映画が放送されている。たまにボディービルダーのドキュメンタリーみたいなのの時もあるけど、まあだいたい映画だ。それが実に、ウェイトルームで見るにふさわしい映画なのだ。たぶんその時その時のフロア担当トレーナーさんが選ぶのだろう、ある時は 『 トランスポーター 』、ある時は 『 アベンジャーズ 』、ある時はシュワちゃんやスタローンの出る・・・要するに無駄にマッチョな男共が暑苦しい戦いを披露する映画だ。
ジムからすればトレーニングのテンションを上げるとともに、絵的に 「 こいつらを目指し、意識高く肉体を作っていけ !」 ということなのだろう。けど基本的に映画好きの僕なんかはついつい目を奪われてしまって、無駄に長いインターバルを取ってしまったりする。逆に、一本の映画が終わるまで我慢してトレーニングしたりもするから、良いような悪いような。
ところが昨日流されていた映画は 『 キック・アス 』。主人公であるヒョロヒョロナヨナヨのオタク学生が、ヒーローに憧れてすったもんだするコメディ映画だ。アクション映画と言えないこともないっちゃないけど、主人公は特にカッコいい体でもないし、強くもないし、向上心も無くて、もちろんトレーニングもしない。正義感は立派だけど、肉体的に僕らが目指すものはない。コメディだから見ている僕は要所要所で笑ってしまって、力も抜ける。この作品は結構好きだけど、これを見ることで僕の筋トレに対する意識が高まることは・・・残念ながらなかった。
これは流石に少し違うだろうよ。心の中で思いながら、ヒット・ガール=クロエの姿にテンション上げて楽しく過ごした午前中であった。
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳