第55回:SFC レポート例

2009年がやってきて、そろそろ来年度のAO入試(あるいは今年度の9月入試!?)を考える人もでてきているのではないでしょうか?? 

今回は一年生の時、私が実際に印南教授の「戦略的交渉論」という授業で提出したレポートを紹介してみます。(一年前なので少し現在と変わっている部分がありますがご了承ください!) 

[問1] 自分の日常生活を振り返って見て、交渉術や交渉戦略として面白いと思われるものを、具体的な事例(授業中のケース以外)とともに記述しなさい。それがなぜ面白いのか、どういう場合に有効か、あるいは効果がないか、分析考察した上で記述しなさい。

友人Tの戦略的恋愛論 

 古くからの友人Tは無関係な人に一目惚れしやすい。しかしながら驚くべきことは、その無関係であった人とTが、数ヵ月後には付き合っている仲になっていることがしばしばあった。あまり異性に詳しくない私は、ある日彼と食事をした際に、何故そんなに上手く好きな人と付き合えるのか聞いてみた。すると彼はこう答える。 
 「とにかく好きな人ができたらまず告白する。当然相手は自分のことを授業で数回見たことがあるだけ、あるいは知らないだろうから、良い返事はもらえない。けれども、その際に『一回だけ二人で飲みに!』だとか『友達としてはこれからも』と約束すると、無関係であったはずの彼女といつのまにか友達の仲となっている。それで、とりあえず友達として二人だけ、あるいは別の女友達も誘って遊ぶのだけれども、彼女は一回告白されているもんだから、俺を少し違った目で見ている。その中で、自分をアピールすれば、一回告白されているから、割と素直に今度は向こうから告白し返してくれる。」 
 なるほど、と思った。告白されるのは「自分を好きであるという人がいる」ことであり、嬉しいものだし、暗い影のない(とりあえず表向きだけでも)純粋な愛によってのものであるから、告白されたほうも、たとえ無関係の人であったとしても「友達なら」と約束してしまうのだろう。またここには「ドア・イン・ザ・フェイス戦術(注)」でみられた、「相手の要求を断って悪いから、これくらいいいか」という心理も働いているように思える。また、一回告白を拒否しているからTは他の女性に関心を移す可能性は大であり、少しでも女性がTのことを意識したのならば、焦って女性の方から告白しなおしてしまう事実も理解できる。さらに言えば、彼女は一回ふった相手に告白しなおしているために、彼に対する愛の意識は自分の判断の正当化、合理化も重なって、長く続くものと思われる。であるから、彼は通常に告白して付き合いを始めるよりも、優位な立場に立って恋愛をリードしていくに違いない。 
 彼の戦略は彼が意図しているかどうかはしらないが、「無関係なまま、相手のことを良く分からないで何とかしようとするよりも、未熟でも交渉現場に飛び出し、相手のことを知り、自らも変え、逆に交渉をすすめていく」ともいえ、恋愛に限らず他の場面でも応用できる。例えば、何かいい企画を思いついたならば、企画が通用するか慎重に慎重を重ねて検証するよりも、実際に世に出してみて世間の目にふれさせ、叩かれる部分は叩かれて、改善していく方がことがすすむケースが多々ある。それをいつまでたっても相手の様子を漠然と伺っているだけでは、何も前に進まない。交渉は一つのパイを争うものではないと同時に、一回の交渉で全てが終ることなどほとんどない。ある交渉を犠牲にして、逆に相手を知り、意識させ、次の交渉へつなげていく大切さを彼から伺える。 

(注)ドアインザフェイス戦術:本命の要求を通すために、まず過大な要求を提示し、相手に断られたら小さな(本命の)要求を出す方法。人間心理を利用した交渉テクニックの1つ。一般に人間には、借りができると、そのままでは気持ちが悪いため、お返しをしなくてはならないと考える傾向がある(返報性の心理)。ドアインザフェイスはこれを交渉に応用したもの。(出所:goo辞書)

栄枯盛衰 

この話にはつづきがある。Tは別れてはまた無関係な女性にいきなり告白するということを繰り返し、さらに自分の恋愛戦略を、私に話したように他の人にも話していたから、すぐに「めちゃめちゃな告白するT」という噂が学内(当時高校生)に広まってしまった。そのため、Tも惚れた相手にアプローチすることが困難となってしまい、最後のクリスマスは一人で過ごしたという。 

彼の失敗から、

・『いきなり告白』は何回も使えない
・自分の心の奥は人にしゃべるものではない

この二つをさらに学んだ。確かに一時有効な交渉術があるかもしれないけれども、何回も使えないのならば、それを使うべきときをじっくり考えなければならない。そして、自らの交渉術を長く続かせたいのであれば、奥の奥に秘めた本当の心情は自分の中にとどめたままでないと、他人に知られてしまってはもう使えなくなってしまう。 

以上です!レポートはこれで全てではないのですが、この授業ではAをもらいました。他学部と違ってSFCではテストではなくこういったレポートが多く出されます。授業によりますが、このくらいユーモアをねらって書いても大丈夫ですので、SFCでの授業も楽しみにしてください!


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