第73回:やりたいことの見つけ方(2)

大学でやりたいことと将来やりたいことの関係ですが、一致している、あるいは一貫している必要はありません。前にも引用したことがありますが、以下の部分をもう一度紹介します。

実践的な人材とは、必ずしも「すぐに使えるスキル」をもっている人材のことを意図しているものではない。少なくともSFCが育てようとしていた「実践的な人材」はその定義ではなかった。問題の本質を発見し、解決する、そのプロセスとして実際に自分の足で情報を集め、それらを多角的な視点から検討し、一つの形にまとめあげ、表現(プレゼン)することで人々の合意をとって巻き込み、実行する―こうした教育を大学時代に行うことで、社会に出てすぐ役に立つ人材を送り出すこが、SFC教育の一つの特徴であり効果であったことは(卒業生の)回答記述からも読み取れる。(「未来を創る大学」より)

現在「新しい大学選択」というテーマで、何故大学へ行くのか?ということについて、色々な大学の教授へインタビューしていますが、大学では必ずしもすぐ使える知識を身につける場ではない、というのが共通した意見であるように感じます。将来社会に出て、あらゆる問題に直面した時、その問題をまず常識やその時の価値観にとらわれず客観的に把握できるか、そして解決していくことができるか、これらの能力をダイナミックに身につけていく場所、それが大学です。SFCでもそれは同じで、上の引用部分にもあるように、将来のための知識の獲得それ自身が大切なわけではありません。 それでは、将来やりたいことと、大学でやりたいことの違いってそもそも何?と考える人もいるかもしれませんが、私の考えで言うと、将来やりたいことは、

・好きなこと
・能力のあること
・市場のあること

この3つの重なる部分で決めていかなければならないと思っています。この考えは私ではなく、SFCの元非常勤講師である牧さんが最終講義でおっしゃっていたことなのですが、好きなことだけではご飯が食べられないので、お金をもらえることをしなければいけない、お金をもらえることであっても、自分自身の能力がなければお金はもらえないので、能力のあることをしなければならなりません。私は野球が好きですが、プロ野球選手はおろか、アマチュアで食べていける能力はなく、将来やりたいことには到底なり得ません。 ただ!ただ、です。上に挙げた3つが重要なのは確かですが、市場と能力が少しでもあるならば、後は「好きなこと」を追い求めてください。大企業や社会的ステイタスの高い職業につきたがるのが一般的な考えですが、企業というもののランクは10年で見事にかわりますし、ステイタスが高い職についても、毎日がつまらないと感じてしまうでしょう。

将来やりたいことの選び方に対して、大学でやりたいことの選び方ですが、これも私の考えで言うと、

・好きなこと
・新しいこと
・人のためになっていること

この3つの集合部分を求めてほしいと思います。将来やりたいことと違うのは、能力のあることではなく、新しいことを求めること。大学という場は、目の前の生産性が問われない、今日、明日のご飯は親が出してくれる、あるいはバイトで稼ぐ代わりに、お金にならないかもしれないが、社会の最先端を切り開いていけることをやっていく場所です。やっているうちに、社会的なニーズとマッチしてお金がもらえるようになるのはとても良いことですし、そのレベルにまで上げていくつもりでやるのが大切ですが、今日明日お金がもらえるようになることを考える必要はありません。 

将来やりたいことに対して違うことの2つ目は、市場のあること、ではなく、人のためになっているかどうかを考えてください。SFCの小熊教授が「研究者が陥りがちなこととして、まだやられていないことを求めてしまい、意志がない。そういった研究は価値がない」というニュアンスのことを仰っていました。目の前の利益が問われない代わりに、誰のためにもなっていないような研究をしてしまうのではなく、絶えず何かしら人のためになることを意識して、初めて自分も満足し、大きな成果が生まれるものだと思います。

次回へ続きます。


洋々ではプロフェッショナルによる無料の個別相談を承っております。

個別相談申込ページからご予約いただくか、

電話またはメールにてご連絡ください。

電話:03-6433-5130(平日1400-2100、土1000-1900。水日祝休み。)

Eメール:you2_info@you2.jp

お気軽にご相談ください。