第94回:これからのAO入試(1)
これからのAO入試
この連載記事もとうとう94回目となりました。入学したての頃から、現在に至るまで、自分の拙い記事を書き続けてくれることを許していただけた洋々さんにはすごく感謝しています。永遠に続いていってしまうのではないか?と思われるこの連載記事も、100回をもって終了するという予定があり、ラスト7回となってしまいました。
様々な企画を立ててきたこの連載ですが、ラスト100回へつながる連載として、「これからのAO入試」というテーマで書かせていただきます。慶應義塾大学SFCがそれまで学校長の推薦が必要だった「推薦入試」とは違い、誰でも自由に出願できる「AO入試」を日本で初めて開始して以来、私立大学を中心に、旧帝国大学を含めた国立大学でもこの入試は拡大しました。
近年「AO入試廃止」といった報道がなされ、AO入試全体が縮小しているかのようにも感じられているかもしれませんが、廃止されたのは全体数からみればごく一部で、大きな流れの中では一貫して拡大してきたと言えるでしょう。
第一回のAO受験者は、母体数からして少ないものでした。そもそも慶應義塾大学といった偏差値的には最難関レベルの大学には関心もいかない、といった方はたとえ合格可能性があったとしても受験を遠慮したかもしれませんし、そもそもインターネットどころかパソコンでさえ現在のように発達していなかった状態では、得られる情報に限りがあったに違いません。現在はAO入試という制度に対して理解を示す先生や保護者、あるいは先輩も増えてきましたが、導入当初そういった入試を受けること自体、誰にとっても「リスキーで普通は手を出さない」ものであったのにも違いありません。
幸いなこと(なのかどうか分かりませんが)に慶應義塾大学SFCでは、AO入試合格者が塾長賞などの個人的業績においても、一般的な教科の科目においても、一般入試合格者の成績を現在に至るまで一貫して上回り、全国的には「AO入試は成功している」という観念が広まりました。「AO入試の学生は能動的であり、学習意欲も高い」という教授の感覚もあいまって、上に記したようにAO入試は全国的に拡大し、またネットなどの技術や塾、予備校の誕生により、受験者人口も増えました。
ただ、「AO入試の学生は能動的であり、学習意欲も高い」というのは、学習意欲が高い人が「AO入試出身」だった場合には「AO入試は~」と語るけれども、「一般入試出身」だった場合特に気にとめないということがある、またAO入試合格者はAO入試で受かったため、「やりたいことを大学で頑張る」ということを自分のアイデンティティにする、すなわちAO入試自身がAO入試合格者の特徴を作り出しているともいえます。
AO入試が拡大すると、定員確保のために選抜機能の働かないAO入試を実施する大学も増え、次第にAO入試の問題点のみが浮き彫りにされるようにもなり、AO熱は塾・予備校ではさらに熱くなりながらも、大学の方ではややおさえられてきているのではないかと思います。
このように情報流通技術等の受験環境やAO入試に対する感覚の変化により、AO入試というものは絶えず変化してきています。平成付近に生まれた私たちから見ると現在AO入試及び周辺の環境は「安定」しているように感じるかもしれませんが、誕生してからまだ20年しか経っていないこの入試は、目に見える変化を現在でも繰り返しています。
次回から100回へ向けて、一足先に「これからのAO入試を」様々な観点から予想していこうと思います。
(次回へ続く)
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