第102回:これからのAO入試(9)
(前回の続きです。)
「高校出たら働きたい」という高校生に対して、「せめて大学だけは出なさい」と大卒でなければ良い給料がもらえなかった世代の親は言います。
が、実質的に大卒であっても高卒と同じような給料、それどころか大学に行かせるのにはものすごく高いお金がかかるし、「むしろ高卒で働き契約社員として早い段階から昇進していった」方が、早く正社員になれる、そのような環境の中に育った親は、恐らく、自分が大卒であっても、子どもに高卒で働かせることを許す場合は多くなるでしょう。今のところ、「大卒の方が給料が格段に良い」という感覚であるので、大卒の親は子どもにも大卒を勧める傾向があるのかもしれませんが、「大卒が実質的に高卒と変わらない、あるいは高卒よりも損している・・・」との事実が発生し、報道された瞬間に、社会は変わり始めるでしょう。高卒で早く働きだす人が増えると、現在でも少子化で苦しんでいる大学はさらに経営難に陥り、どんどんその数が減っていくことと思われます。そして残るのは、「行けば必ず正社員になり、高卒よりも給料が良いことが分かっている一部の上位大学」や「医者や弁護士など、特定の職業人を養成するための大学」となると考えられます。この時点で大学が再びエリートのものとなりますが、それは一昔前の事情とは違います。
契約社員といっても、数年で社員となり、子どもが大学に行くか、働くかの選択肢をとる頃には、なんとか大学に通わせるだけの収入を得ている可能性があります。そのため、就職活動をする傍ら、高校生たち、あるいは親は「エリート」を目指し、今までにない超熾烈な受験競争が繰り広げられることでしょう。そしてそれはAO入試も同じで、今まで合格していた人も、大学の絶対数が少なくなることによる競争の激化で、合格しなくなるケースが出てきます。受かるのは、一部の実績もある、学力もある、ビジョンもある人で、普通の人には手が出ない入試となるかもしれません。
すごく大雑把な予測をしましたが、途中で政府の手が介入するケースも考えられます。政府やそれに意見する大学の人間は、大学を出た人ばかりであるので、大卒が減り、企業が高校を卒業した人ばかりをとっていくことをひどく嫌がることでしょう。企業が認識しない大学の意味とは言いましたが、高校とは違い大学という自由な学問の空間の中では、色々な価値観や考えに触れることができます。
しかしながら、企業が早々に人材を獲得してしまうことは、色々な価値観や考えに触れることを許さず、企業の価値観に染まらせることをも意味します。企業にとってはそれが都合が良いかもしれませんが、政府や大学からみれば、視野が狭くなっていく日本人が増えていくように感じるのではないでしょうか。そしておそらくそう感じた政府は、契約社員など、労働に関する何かしらの制約を設け、大卒の急激な減少を防ぐことが考えられます。
今回挙げたこと以外にも、いつ何が起こるのかが分からないのが社会というものです。逆に大学院へ行くことが当たり前になる世の中となるかもしれません。
(次回へ続く)
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