第49回:管理システム

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複雑に物事が絡み合いものすごいスピードでそれが進む今の社会では、管理システムが極めて重要だ。

建築は重層化している。
何を作るか考える段階からその考えをまとめる段階がまずある。そこから実際に設計が始まり施工が開始されるが、ここまで大規模な計画だと10年はかかる。営業や広報から経理、法律や自治体まで数多くの人や分野を巻き込み長い時間と労力がかけられ積み重ねられる。そこから施工が始まると、現場で使われる各部品を一種類ごとに正確な数を下請け会社に注文する。それらの多品種で大量の部品たちは受注されてから作られ始める。下請け会社にも1次から3次4次と数多く存在する。そしてその建築ができてから使用し、維持し、最後には壊す、という作業まで長い年月と多くの出来事と、多くの人を巻き込んでいる。まさに多重化しているのだ。これは管理システムの重要さを意味する。先のように多くの作業と人が同時に動き、それをそれぞれ異なる機関が管轄している。それをひとつにまとめる管理が重要なのだ。これは間違いなく日々重要度を増しているはずだ。

車や鉄道による生活スピードの上昇や、資本至上主義や民主主義による社会構造の変化があった。それらの変化は新しい社会の管理システムを発生させた。車やそれを運ぶ道路の建設で都市は活動のスピードを増し、高密度に平面に広がった住宅は防災の考慮により空高く伸びる高層住宅へと姿を変えた。人々の活動の場は機能ごとに区画整備がされた(僕の住む月島では江戸の古い住宅街と祭りがある一方でバブル期の超高層住宅群がそびえ立ち、その鼻先には銀座や丸の内といった商業区域と行政区域である霞ヶ関も目に入る。反対方向には東京駅が見え、鉄道の中心を担って人々をこれらの地域に淡々と運んでいる)。

近代日本の都市計画のひとつの目標は、城下町や港町など古い形式の都市を未来にどう更新して利用するかを試行錯誤することにある。その過程で多くの市町村が合併し、小さく細分化した地域は大きく膨らんでいる。今まで地域のことを決めるのには地元組織の集会で決められたことが、今では隣町まで泊まりがけで出向いて集会に参加しなければならない。これでは地域社会がダメになってしまう。先の近代日本の話と同じように、やはり新しい社会の管理システムが必要なのだ。

学校でぼちぼちグループワークがあったりする。大体が3人だ。3人1組は最小単位の組織だと思うから、この人数は学びの場に最適だと思う。グループでは自らの限界を知り、限界を伸ばすことに奮闘し、「3人寄れば文殊の知恵」を心の底からの感動とワクワクに教えられる。そしてグループは、そんな簡単に「管理」できるものではないし、そうするのが最適だと考えるのも安易だと改めて気付くのだった。

更新:2012-10-06
早稲田大学 創造理工学部建築学科 佐藤鴻