第50回:ポテンシャリティ①
現在学校の課題にて、「早稲田という地のポテンシャルをあげる」という課題に取り組んでいる。3人1組のグループワークでなかなか奮闘具合が楽しい課題だ。3週間の課題で現在やっとそれが終わったところなので、ここまでのあらすじを記したいと思う。
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僕たちは高田馬場一丁目の一角にある路地を見つけた。2m程度の狭い坂の路地で、その突き当たりには三軒の玄関が互いに向かい合っている踊り場がある。僕たちはその光景の先に、そこに住む人たちが会話を交える姿が見えたことに感動した。ゆったりとした早さで流れる時間が、路地の形状に守られ、車や自転車に犯されずに遺ったのだ。僕たちはこういう光景を継承していく事が土地のポテンシャルを守ることに繋がると考え、問題に取り組んだ。しかし法律のもとこのような狭い道路は防災の考慮によっていずれ拡張されるため、一時的にのみ保たれていることを知った。それが意味するのはこの光景がいずれは無くなるということだった。
僕たちは先の路地の踊り場に住む新井さんと話すことができた。彼の家もまた戦後すぐのもので、今は現行の法律にそぐわない既存不適格の対象と認定されている。この家が面す路地は建築基準法制定から60年近く放置されてきたとして、新宿区の対応は圧力的だ。新井さんには耐震補強のための助成金が降りない。
建築には必ず寿命があり、何らかの形で更新されるべきものだ。しかしどのように更新されるべきなのか?単純に家を建て替えることは、例えば今回の場合なら、4m道路確保のためセットバックすることになる。一戸の問題が町の景観の問題に直結してくるのだ。
町を更新する際に現行の社会制度や方針を否定することはできない。それを踏まえ僕たちは「町の更新」への態度を2つ定義した。
1. 過去の豊かな空間(路地など)を、現行の社会制度や方針(防災など)に合うよう再計画
2. 現行の社会制度や方針にあった空間を求め、過去の豊かな空間を壊して新しい空間を創造
この2つの態度には「過去の町をどう見るか」と「町の更新をどう行うか」の違いが表れている。
「過去の町をどう見るか」
過去の町を哀愁を含み楽観的にとらえる/現代社会に合わない不都合なものと捉える
「町の更新をどう行うか」
歴史を緩やかに継承し未来へと繋ぐ(問題の先送り)/デジタル的な観点で更新する
<つづく>
早稲田大学 創造理工学部建築学科 佐藤鴻