第51回:ポテンシャリティ②

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裏と表は常に一体。どちらかしかないことは決してない。
アンパンマンにはバイキンマン、グローバリズムには地域主義、太陽には月、男には女。どちらかがいなくなればそこでその秩序は消える。ポテンシャリティとはその語の通り、隠れているからこそ発揮される力だ。潜在力と顕在力。つまりポテンシャルを引き出すためにポテンシャリティ何たるかを調べる内に、実はそれが力を滅することに直結してしまう。この矛盾に僕らはぶち当たった。

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   1. 保存:歴史的価値を見出して、標本化する。
   2. 破棄:現代社会の理念に従い、新しくする。
   3. 更新:保存と破棄を繰り返し、更新をする。

僕らは解答方法を3つ挙げた。そしてもっともバランスの取れた「更新」を選んでテーマにした(前回紹介 http://you2.jp/ao/arc_050.htm )。そこで出た提案の例に、石畳案というのがあったので紹介する。これは「過去への哀愁という形だけでモノを遺すことはできない。しかし哀愁を遺すことはできるのではないか。」という考えのもとにある提案だ。地区内の道路、特に二項道路のような失われつつある路地に石畳を敷き詰め、現在まで継承されてきた道路のカタチをトレースし、今後この道路が失われてもその気配を遺すことを狙った計画だ。これは人々の「認識のデザイン」で、ソフトな計画だった。この石畳案からいくつか同様に「更新」の提案を考案するうちに、新たな解答方法に僕らは辿り着いた。

   4. 継承:対象を分析し、抽象度の高い要素を抽出する。

更新という方法も、結局は僕らが何かしらで手を加える。これではその場所が積み立ててきた時間の上に成り立つ、様々な事物の存在バランスに手をかけることになってしまうのだ。木を一本抜くだけで視界は一気に隣の高層ビルを捉えるだろう。道を1mでも拡張すれば日射の量や色は変わり、人が振り袖交わす光景も薄れるだろう。複雑に絡み合った家々や法律や機能に対して手を加えることは、この地域においてはかなりリスキーなことであると僕らは判断してしまった。
そこでこの「継承」が最終的な僕らの提案方法として考案された。これは要するに「転用」である。それぞれの場が持つ良さに対して分析に分析を重ね、どんな要素が「良さ」なのかを抽出した。分析を重ねた要素は非常に抽象度の高いもので、これは転用することができる。転用してその表現方法を継承していくことには大きな意味があるのではないか。またポテンシャリティの問題にも十分とは言えないが考えが及んでいる。

更新:2012-11-12
早稲田大学 創造理工学部建築学科 佐藤鴻