第72回:イギリス旅行記(その2)

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8月12日(London)

この日は、大英博物館を訪れた。

去年ギリシャに行ったとき、パルテノン神殿をはじめとする数々の文化遺産/遺跡を見てまわった。しかしそのうちのいくつかは、一部が剥ぎ取られていたり、本来であれば対になっているはずの像がなかったりした。昔、イギリス軍によって持ち去られた品々は、現在この大英博物館に展示されている。

ギリシャ人側の言い分をこれでもかというくらい聞かされていたので、大英博物館でいざ目の前にしたとき、何とも言えない複雑な気分になった。大英博物館に飾られている品々は、イギリスの「覇権の歴史」とも言える。

また個人的には、「Cradle to Grave by Pharmacopoeia」という作品が面白く、見入ってしまった。この展示作品は、ひとの一生を、薬という視点から描いたものだ。

人間は、生まれる前から薬と関わっている。まだ母親の体内にいるときから、超音波や薬・注射が使われているし、入れ歯のように身体の一部が「医療用パーツ」に置き換わることもある。健康促進のために、日頃からビタミン剤などを摂取している人もいる。

展示室の中央に置かれた大きなテーブルに、あるひとりの人間が生まれる前から死ぬまでに関わった薬とその量、種類が時系列に並べられていた。錠剤は網にひとつひとつ入れられ、一目でそれが「物凄い量」であることがわかる。当然、歳をとるに従って薬の種類も量も多くなっていく。

薬の展示の下には、その時々に撮影された家族や友人との写真が、これまた時系列に沿って並べられていた。わたしたちの日常を支えている、薬(医薬品)という存在。なんだか、いろいろ考えさせられた。ライフヒストリーに興味のある方、大英博物館に行く方には、ぜひともおすすめしたい。

更新:2011-08-19
慶應義塾大学 環境情報学部 水谷晃毅