第81回:一年前のシューカツをいまさら振り返ってみる(その1)
一個下の後輩たちが少しずつ就職活動を始めていて、髪を黒く染め直している人もちらほら見かける今日この頃。
シューカツといえば、自分の場合はコンサルティング業界を主に受けていた(むしろコンサル以外はほとんど受けなかった)ため、いわゆるWebテストやエントリーシートよりも、面接試験で毎回のように出された「フェルミ推定」の方が強く印象に残っています。
「フェルミ推定」とは、「実際に調査するのが難しいような量を、いくつかの手がかりを元に論理的に推測し、短時間で概算すること」。これだけだと、一体なんのことだかわからないので、ひとつ有名な問題を例に挙げてみます。
【アメリカのシカゴには何人のピアノの調律師がいるか?】
シカゴにいるピアノの調律師の数。そんなの、わかるはずないですよね。Googleで検索しても、正確な数はそう簡単には出てこないと思います。そこで、フェルミ推定ではこう考えます。
『まず以下のデータを仮定する。
1.シカゴの人口は300万人とする
2.シカゴでは、1世帯あたりの人数が平均3人程度とする
3.10世帯に1台の割合でピアノを保有している世帯があるとする
4.ピアノ1台の調律は平均して1年に1回行うとする
5.調律師が1日に調律するピアノの台数は3つとする
6.週休二日とし、調律師は年間に約250日働くとする
そして、これらの仮定を元に次のように推論する。
1.シカゴの世帯数は、(300万/3)=100万世帯程度
2.シカゴでのピアノの総数は、(100万/10)=10万台程度
3.ピアノの調律は、年間に10万件程度行われる
4.それに対し、(1人の)ピアノの調律師は1年間に250×3=750台程度を調律する
5.よって調律師の人数は10万/750=130人程度と推定される』
ということで、答えは「130人」となるわけです。正解かどうかよりも、答えに至るまでの論理的な思考力、発想の柔軟性、スピードなどを見られます。
「フェルミ推定のコツ」をよく聞かれるのですが、個人的には「分解」「場合分け」をひたすら意識していました。たとえば、市場規模を聞かれたら「市場規模 = 需要量 × 単価」に分解する。日本の空手人口を聞かれたら「空手をやる場所 = 道場 or 部活」に分けてみる。それぞれの要素を、さらに都道府県別、年齢別、男女別…などに細分化していく。どんな切り方をするかは、その人次第。そこに、性格や個性、論理的思考力があらわれます。
コンサルや外資系企業の選考では定番の問題なので、苦手な人は、身のまわりのちょっとしたモノの数を「推定する」癖をつけておくといいかもしれません。
慶應義塾大学 環境情報学部 水谷晃毅