第320回:男三人山梨旅②~パワースポット前編~
うどんで腹を満たすことを諦めた我々は、とりあえずK行きつけの甘いもの屋さんで一時的な空腹を凌ぎ、先に進むことにした。この店は70歳を超えたお婆ちゃんが一人でやっている、いかにも田舎らしく懐かしい感じのする店であった。地元の女子中高生の溜まり場らしく、僕らが行った時にも部活帰りらしい女の子たちが狭い店内を占領し楽しそうにどうでもいい話をしているようだった。その空気を粉々に壊しながら、少女たちの少し怯えたような数奇な視線を感じつつ、気持ち大きめのクレープを3口くらいで胃袋に流し込んで、店を後にした。我々が出た後、きっと彼女たちは「あの厳つい3人組はいったい何者だったのだろう」と盛んに議論したに違いない。山梨に一つ足跡を残してやった気分だ。
第一の目的地、パワースポット“昇仙峡”は、甲府から車で20~30分ほど山道を登ったところにある。山道は僕が生まれ育った青梅から奥多摩へ続く道と似ている。独特の静かさがあって、木や川の匂いが気持ちを落ち着かせてくれる。高度が上がるにつれて気温が少しずつ下がっていく。目黒を出発して2時間ほどだが、とてつもない辺鄙なところに迷い込んでしまったようだ。
昇仙峡周辺まで来ると観光客向けの飲食店やお土産屋さんが立ち並んでいて少し賑やかだ。連休中で客もそこそこいる。いわゆるパワースポットと呼ばれる地点はここから更にロープウェイで5分ほど上がってから徒歩でいくぶん登ったところにあるらしい。なるほど、簡単にパワーはくれないらしい。
後編に続く