第395回:草津旅行③

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腹を満たした後、部屋に戻りチェックアウトの10時頃までダラダラしてから、また中心街の方まで散歩した。この日はよく晴れていて、昨晩数センチ積もった雪も、陽の当たっている所から溶け始めていた。湯畑の周りは、前の日の夜と同じくらいの人口密度で、程よい活気が快適だった。前日、湯気でよく見えなかった湯畑の全体が良く見えた。お湯を冷ますための湯畑、よく考えたものだ。面白い。お湯の底には長年、酸に充てられて白くくたびれた石の残骸が転がっている。何だか地獄の窯を覗いているようだ。そんな石たちや、相方の顔の瘡蓋を眺めていると、本当に体に良いお湯なのか疑いたくなった。

いちおう湯もみのショーを見て、お土産商店街をブラブラ歩いた。途中で両親への土産として温泉まんじゅうも買った。帰り際、湯畑を囲む石の柵に“1919年 嘉納治五郎”と彫られているのを見つけた。どうやら訪れた有名人の名前を一本一本に彫っているらしい。念のため一緒に写真を撮ってから、“桜井和寿”を探して柵の周りを一周した。あるはずがない。ペンションに停めておいた車に戻り、南下した。

 

方向的に帰り道中ということで、軽井沢に寄ってみた。安い駐車場に車を停めて、旧軽井沢通りをブラブラした。慣れている人は旧軽井沢通りを旧軽「キュウカル」と言うらしい。牛カルビみたいだね、と相方に言うと呆れ顔をされた。通りにはヨーロッパ風のパン屋やジャム屋やソーセージ屋が並んでいる。要するに、別荘で休暇を楽しんでいるセレブ達が、気の遠くなるような緩慢なスピードで気取った朝ごはんを食べたりする店だ。僕が会社に行く前に数十秒で口に掻き込むような牛丼屋は、ここには必要ないのだ。もう時刻は13時を回っていたけれど、大量の朝ごはんを食べてしまった僕は、珍しく腹もさほど減っておらず、ここでは、パン一個と、クレープと、ドイツ風のホットドッグを食べるだけに留まった。

 

こうして僕らの一泊二日の旅行は終了。次はどこに行こうか。