第411回:北へ②

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次の日、土曜日、結婚式当日は当然二日酔いからのスタート。ホテルの部屋は、元主務と、前日一緒に呑んだ先輩との3人部屋。例によって寝力の弱い僕はいつも通り、一人で8時前に起きてしまった。式自体は昼過ぎからだったし、他の2人は当然まだ爆睡だし、暇を持て余した僕は一人で大浴場に行った。酒で膨らみきった身体と思考回路がところどころショートした脳を、サウナで少しだけ回復させた。10時前に部屋に戻ると、他の2人もうっすら起き始めていた。けどまだ動き出す元気はないみたいで、ウトウトダラダラしている。せっかちな僕はこういう手持無沙汰な時間があまり得意ではない。休日、父親に外出をせがむ子供のように、二人を叩き起こし、準備をさせた。だけど結局ホテルを出たのは12時に近かった。

 

せっかくの北海道ということで、ホテルから式場までの道中にあった回転寿司屋で朝昼兼用の食事を取った。北海道のお寿司は流石だ。例え回転していても美味いのだ。酒の味が残った喉で、はたしてどれほど味が分かっていたのかは甚だ疑問だが、確かに美味しかった、気がする。

式には、柔道部出身のやつらが20人くらい呼ばれていた。主に新郎の同期、僕にとっては後輩たちだ。大学を卒業して、それぞれの生活を送り、増してや歳も違うと、こういう特別なイベントの時しか会えない連中だ。数年ぶりに会う者も多い。印象としては、だいたいみんな太ったな、という感じ。太って、オジさんぽくなった。自分は気を付けようと、改めて心に誓った。

式は爽やかだった。爽やかで、お互いがちゃんとお互いのことを好きなんだということが見える心地よさがあった。個人的には、新郎新婦の友人やお世話になった人たちのスピーチが特によかった。柔道部の連中は、やはりそこそこ暴れていたけれど、僕の同期の結婚式の時に集まった僕の同期の連中よりはだいぶお行儀がよかった。

その後は、オフィシャルな二次会、そこから酒好きが残った三次会、そこで仲良くなった連中での四次会までいった。寝不足&二日酔いスタートの、昼過ぎから呑んでの四次会だ。あまりないことだが最後の方はあまり覚えていない。気が付いたら同部屋3人、ホテルのベッドで、スーツのまま仲良く寝ていた。なかなか気持ち悪かったけど、楽しかったなぁと思える朝を迎えた。

チェックアウトぎりぎりの時間に慌ててホテルを出て、空港への道すがら、いちおうジンギスカンを食べた。どう見ても二日酔いの男3人で、会話もほとんどなく、さほど進まない箸で肉をつついた。正直、前日の昼に食べた寿司より更に味が分からなかった。たぶん美味しかったはずだ。

15時頃、千歳空港発の飛行機に乗り込む頃にやっとお酒が抜けてきて、機内で「昨日は結局何をしたんだっけ」と同乗した同期とお互いの断片的な記憶を摺り合わせ、一緒にいたはずの人にLINEをして、何か失態が無かったかを確認して回った。

 

そんな訳で、最初に書いたように、ほとんどの時間酔っぱらっていて大したことはしていないんだけど、楽しかった。そして新郎新婦には、改めておめでとう、だ。