第421回:夏休み【佐渡編】⑥

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この日のランニングコースは単調だった。防波堤と草むらに挟まれた道がひたすら続く。ところどころ坂があって、登り切ったところは海に向かって崖になっていて見晴らしだけが良かった。きっと晴れた日には中国らや韓国やらが見えたりするのだろう、と想像した。たまに、海に面したホテルや民宿があったけど、半分近くはもう営業していないように見えた。何の目的も持たずにフラリと訪れた若者に、喜んでくれる島の人たちの気持ちが少しだけ分かった気がした。

単調な道を5㎞ほど行ったところにグーグルマップ通り夫婦岩なるものがあった。正確には、グーグルマップを観ながら走っていたからこそそれが夫婦岩なのだと気が付いた。要するに何の変哲もない大きな岩が二つ、海から顔を出しているだけだった。どこかで見た夫婦岩は二つの岩を太いしめ縄のようなものでつないであった。そのくらいしておいてくれないと、それとは分からない。あるいは、佐渡の夫婦岩はたまたま今別居中なのかもしれない。かえって虚しくなる観光スポットであった。

夫婦岩で折り返した頃、雨が降り出した。なかなかの本降りだ。この夏休み、5回目くらいの「やれやれ」が出た。ホテルの入口前で、雨と汗でドロドロのジャージを絞って、コソコソと部屋に戻った。

大浴場は清掃中だから、着ていたものをコインランドリーにぶち込んでから部屋のシャワーを浴びて、洗濯が終わるまで、次に何をしようか考えた。

 

結局、大した案も思いつかず、ネットで調べた観光スポット“宿根木”までドライブしてみることにした。宿根木とは、江戸後期から明治初期に寄港地として栄えたらしい佐渡最南端の町だ。説明には、超密集して建てられた黒塗りの古い木造住宅街があるとのこと。超密着して建てたのは塩やら風やらから家を守るための知恵らしい。