第444回:佐川美術館

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この前、おそらく人生で初めて美術館なるものに行ってきた。もしかすると小さい頃に、社会科見学とか、親に連れられてとか、行ったことがあるかもしれないが、今ザッと記憶をたどってみた結果、申し訳ないけれど記憶には残っていない。何れにせよ大人になって、自らの意志で美術館に行ったのは間違いなく今回が初めてだ。(実は、「自分の意思で」というのも少し語弊があって、完全に相方の趣味なのだが。)

どこの美術館に行ったかと言うと、滋賀の佐川美術館。誰もが知っている佐川急便のお偉いさまの意向で、会社設立40周年で建てたという美術館だ。人工的な四角い池中に、同じく四角く無機質な外観。だけど、こんなに美術や芸術に知識のない僕でも少しワクワクした。

今回この美術館に足を運んだ最も大きな理由は、茶室の見学だ。なにやら業界ではたいそう高名な陶芸家・楽吉左エ門なる人物が設計した茶室らしい。申し訳ないけれど、僕は茶道にも陶芸にも明るくない。けど、一つ一つの空間に細々とした拘りが詰まりに詰まっている、この贅沢っぷりはなかなか気に入った。もっとも、何人かで堅苦しいお茶会をやるのではなく、一人でゴロゴロと寝転がっていたい空間である。

 

至極失礼な想像だが、おそらく佐川の財力をもって、有名な陶芸家先生に「金に糸目はつけないから好きな茶室を作れ」といった依頼でもしたのではないか。素直に羨ましい依頼である。残念ながらこの先、僕に茶室の依頼が来ることは間違いなくないから、自らが大金持ちになって、こんな感じの別荘でも建てられたら楽しいだろうなあなどと妄想した。