第583回:東京マラソン②

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今の時代は本当に便利で、走っている人のスマホやらスマートウォッチのGPSから、「今どこらへんを走っていて、このままのペースで行くと各地点を何時頃に通過しそうか」を応援者が確認できるアプリがある。地図上に目的のランナーのピンが立っていて、リアルタイムでコースを進んでいく。ハリーポッターに出てきた魔法の地図みたいだ。学校や寮の、どこに誰がいるかが全部見えてしまう、なんともズルい魔法の地図である。このおかげで、我々応援者はピンポイントで沿道にスタンバイして、すぐに目的の走っている人を見つけられる。

僕らが電車で日本橋に目指している間も、目当てのピンは順調に進んでいて、しかも当初僕が想定したよりも速いスピードで進んでいて、思ったよりギリギリになった。日本橋の駅から地上に出てから、少し小走りで先にスタンバイしていた友達と合流した。コロナ禍で人出は少なく、歩道はガラガラ、快適な沿道だった。先に見ていた友達に、Sさんがどんな格好で走っているか尋ねると、上下暗めの迷彩で、赤い帽子を被っているとのこと。「毎回、目立とうとして原色や蛍光色のジャージで走っているのに、今回は珍しいね」と言うと、「多くの人が同じ考えで、同じような格好で走るから、結局目立てないから、もうやめた」らしい。確かに、蛍光色だって、蛍光色に囲まれたら、森の中の一本の木である。とは言え迷彩とは、本来身を隠すための柄であるように、本当に目立たない。なかなか振れ幅が凄い。

僕と相方が友達と合流して沿道にスタンバイして、5-10分くらいでSさんが通った。32km地点としては、明らかに元気だった。顔も明るかった。「まだ全然余裕だわー、どこでスパートかけようか迷ってんだよなー」とのこと。どうやら今回は走り込みと減量が上手く行ったらしく、本当に快調のようだ。砂糖の塊みたいな栄養補給サプリを手渡して見送った。