第744回:ゴルフ・コースデビュー②
アクアラインは、若干渋滞していた。「週末早朝のアクアラインは、ゴルフに行く人で混む」と、噂には聞いていたものの、信じていなかった。朝の6時に?アクアラインが混む?そんなにたくさんゴルフする人がいるわけないじゃん・・・と思っていたのだが、噂は本当だった。そんなにたくさんの人がゴルフをしているらしい。この時点で軽い衝撃を受けた。東京から、海ほたるを抜けて、地上の道に出たタイミングで、ちょうど太陽が顔を出した。なんだか“デビュー”って感じがした。
道すがら、主に他の組の人目につく可能性のある最低限のゴルフマナーだけ教わった(僕ら身内にはマナーに厳しい人はいないから)。グリーン上は走っちゃダメ。ただし、遅いと後ろの組に迷惑がかかるから、グリーンを降りたら小走り。あと、グリーン上で、他の人のコースになり得るところは踏んじゃダメ。このくらい。紳士のスポーツってのは、面倒くさいものだと思ったけど、まぁ柔道だって似たような精神論がたくさんあるじゃないか、と思って納得しておいた。
6時半を少し過ぎた頃、ゴルフ場に着いた。ゴルフ場って田舎にあるもの、というのは常識だが、このゴルフ場も確かに山の奥の奥にあった。こんなところに?と言いたくなるような山道を登っていくと、急に建物が現れた、という感じ。しかしながら、僕はもともとこういう所で生きてきた人間だ。登れば山、下れば河、それしかないような場所で、野生児のごとく育ってきた。「ゴルフって、非日常の大自然の中でプレーするのが気持ちいい」というのもよく聞く話だが・・・、僕の場合、特に非日常の感動は感じなかった。なんなら少し懐かしいくらいの気持ちだった。