第766回:フルマラソン⑧
手荷物受け取り場所のすぐ向かいに着替え用の大きなテントがあって、そこでとりあえず街の方まで移動する格好に着替えるのだが、これがまた難儀。だって、絶対に膝を曲げないまま着替えないといけないのだから。とにかくゆっくりゆっくり、びしょびしょの短パンを脱いで、ジャージを履いて。Tシャツを脱いで、インナーは見た目恥ずかしいからすぐ脱いで。着替えの途中、出発前に食べたお菓子のゴミが、隣で着替えている人の荷物の上にヒラヒラ落ちてしまった。「すみません」と言ってすぐに拾おうとするのだが、いかんせん膝が曲がらないから、必死に手を伸ばしても届かない人になってしまった。察した隣の人が笑いながら拾って渡してくれた。もはや健常者とは言い難い。それくらい、本当に何もできなかった。15分くらいかけて、やっとのこと暖かい格好に着替えて、テントの外に出た頃、ちょうどSも荷物を受け取ってテントに向かって歩いてくるところだった。お互いに目があった瞬間、なんだか心の底から笑ってしまった。今考えても何の笑いだったのかよく分からないけれど、とにかく笑えて仕方なかった。Sは「聞いてた話と違うよ。こんなにキツいとは・・・。30kmマラソンとは別次元。フットサルとサッカーくらい違う競技・・・。」とボヤいていた。Sは高校時代サッカー部、正直なところ僕には、フットサルとサッカーのキツさの違いは分からなかったけれど、何を聞いても笑えた。
足を引きずりながら、階段なんて一段ずつ登りながら、マラソン大会の運営が手配してくれているバスに乗って、とりあえず高知駅まで戻った。駅からタクシーでスーパー銭湯“土佐望月温泉 姫若子の湯”に行った。裸になって、シャワーで汗を流して、とりあえず低温の炭酸泉に。両方の乳首が染みた。他に痛いところがありすぎて気が付かなかったけれど、あの乳首スケスケインナーではやはり擦れてしまうらしい。他にも、左足の人差し指の爪が真っ黒になっていた。
・右足 大腿四頭筋・ハムストリングス・内腿・ふくらはぎ 肉離れ
・左足 大腿四頭筋 肉離れ、人差し指の爪 死亡
・両乳首 擦過傷
もう満身創痍、以外の言葉は思いつかなかった。特に右足が重症。僕の軸足は左だから、やっぱり右は弱いんだろうな、と思った。