第780回:カヤック②

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いざ搭乗。おじさんは別の一人乗りカヤックで並走。習った通りにパドルを使って「まずは、真っ直ぐ進んでみましょう」とか「右に曲がってみましょう」「停まってみましょう」とかを一通りやってからは、どこかを目指してひたすらに漕ぎ進めるだけだった。内房だから波も小さく、実に穏やかな海。ただ暑かったけれど、酔う心配もなく、快適な船上だった。

岸から少し離れた無人島を目指している最中、おじさんが「休憩がてら、海に足でも入れてみますか」との提案。カヤックに横から腰掛けるような体制で、相方と二人で足を投げ出した。僕は完全に河育ちの人間だから、海に来ると毎回思うのだが、海って生温い。外気が暑すぎるのもあるけれど、冷たさがどこか物足りなく感じた。

しばらく海で足をバタバタしてから、「じゃ出発するので、元の位置に戻ってください」で、足を戻そうとした瞬間。カヤックは大きく傾き、そのまま抵抗する間もなく一気に転覆した。

繰り返しになるけれど、僕は河育ちの人間で、水には強い。岸から遠く、当然、底に足は全く付かなかったけれど、パニックになんてなることは全くない。しかもライフジャケットを着ているから、海に投げ出されたところで、どうやっても沈むことはない。とは言え「まず転覆することはない」の情報から、一気にこの状況、流石に一瞬、思考が停止した。が刹那、まず思ったことは「Ozmo!10万円!」だった。防水だし、水深耐性も大丈夫だけど、もし沈んでしまったら、潮の流れもあるし、なかなか見つけ出せないのは明らかだった。申し訳ないけど、ここだけの話だけど、相方の安否については、全く思考に乗ってこなかった。