第790回:富士山登頂⑧
分かっていたことだけれど、下山は、登山とは比べものにならないくらい楽で早かった。登りの時は足が取られて、進む距離が「1歩−滑った距離」だったのが、降りでは「1歩+滑った距離」になる。足の回転も早い。また登りルートが、斜面の角度を考慮して稲妻型になっていたのに対して、降りはもう少し直線的。高度で考えて、3倍くらい早く降りて行けた感覚。中でも砂走りと言われるエリアは、砂が細かく、斜面も急で、本当にスキーで滑り降りるような降下。最後のアトラクション的に、楽しい下山だった。
今回改めて自覚したのだが、僕はたぶん降りに強いライプだ。一般的に「降りは膝にくる」と言われる。要は自分の体重が、膝と、正確には大腿四頭筋に勢いよく乗っかるから、それを受け止められるか?という話だ。ただ僕は、現役の時の坂道や階段ダッシュもしかり、引退してからのマラソンもしかり、降る時に、そこまでの負荷や苦痛を感じたことがない。今回の富士山下山でも、ほぼダッシュに近い速度で、滑りながら走りながら降れた。
六合目から下は、登りの時と同じように、いわゆる山道になり、砂走りはおしまい。六合目の山小屋(登りとは別ルートなので、違う山小屋)で、五合目から特設駐車場までのバスの時刻を調べると、あと20分強で出発するらしかった。それを逃すと次は+30分後になる。ここまでくると(あるいは僕らみたいな人間は最初から)、のんびり登山を楽しむという気持ちよりも、「やることやったので早く帰りたい気持ち」が強かった。休憩を一瞬で切り上げて、またダッシュ下山をした。砂じゃないけど走り。すでに限界を超えて、膝がガクガクしているYを、励ましながら無理やり走らせて、なんとかバス出発時刻3分前くらいに五合目へ。オンタイムで出発したバスに30分ほど揺られて、特設駐車場に。
特設駐車場の横にある道の駅のトイレで濡れたタオルで身体を拭いて、新しい服に着替え、帰路ドライブへ。Yは、「もう二度と登らない」意思が固く、安く手に入れたらしい登山靴を、道の駅のゴミ箱に捨てていた。本当に、“楽しむ”ではなく、義務感からくる“ビジネス登山”だった。
朝というか、もはや深夜の02:00から動き出して、むしろ12:00くらいから寝るのを諦めてトレーニングなんかしちゃったから、流石に眠気は強かったけれど、疲労感としては、大したことはなかった。僕の感覚、青梅マラソン(30km)走ったくらいかな。2月に走ったフルマラソンに比べれば、屁でもない。特に怖がっていた高山病にもならずに済んだし、サクッと目標達成した、富士山登頂でした。