第789回:富士山登頂⑦
富士山登山者はここで選択を迫られる。「須走ルートの山頂で終わるか“真の山頂”を目指すか?」だ。皆さんご存知の通り、富士山の山頂は火口の形になっている。要は、ほぼ同じ標高でぐるっと一周できるような形。須走ルート山頂も、その一周のうちの1ポイントだから、ここでも「登頂した」と言っていいらしいのだが、“その一周のうちの最も高い場所”ではない。“真の山頂”は、須走ルート山頂のちょうど反対側くらいで、行こうと思うと、火口を綺麗に一周することになる。所要時間は1時間程度。ここまで登ってきて、あと1時間プラスするというのは、体力的にも精神的にも迷いところ、というわけだ。ちなみに、須走ルート山頂の標高は3,710m、“真の山頂”は剣ヶ峰と言って3,776m。
僕らの場合、霧のせいで、景色を楽しんだり、その景色から感じる達成感が味わえないのも明らか。とはいえ、もう二度と登らない可能性の高い富士山で、この機会を逃すと・・・。そんなことをYとゴニャゴニャ相談して、「まぁ行っておくか」となった。
火口一周は、当然ながらそれまでのルートに比べるとだいぶ平らな道だ。それでも地味な登りと地味な降りがある。「もうちょい平らにしておけよ」と言いたくなる。そして最後、剣ヶ峰に向かってはちゃんとした登りになる。また足場も悪い。久しぶりに「やれやれ」だった。
剣ヶ峰にも、須走ルート山頂と同じように、石柱が立っていて、それと一緒に写真を撮り、ミッションコンプリートと言わんばかりに、さっさとその場を後にした。須走ルート下山口の手前に山頂の山小屋みたいなのがあって、そこでYはうどんを、僕は持ってきた最後のおにぎりを食べた。富士山山頂の物価は、下界の2~3倍くらい。ちょうどこの登山の前の週にニューヨークに行っていた僕は、「なんだかニューヨークと同じくらいだなぁ」なんて思った。
山小屋の横には、山頂に物資を運ぶ車が停まっていた。車とはいえ、砂の斜面を登るためにタイヤではなくキャタピラ、サイズも大型トラックくらい、前方に荷物を乗せるための大きなスコップみたいなのを搭載している。見た目はもはや戦車。これだけ大掛かりに運んでこないといけないんだから、物価が2~3倍でも納得だ。むしろもっと取ってもいいような気もした。