第788回:富士山登頂⑥
七合目以降、徐々に斜面が急になっていった。しかも段々と砂利の地面になり、一歩一歩足が取られる。急かつ足場もそんなんだから、山頂に向かってまっすぐ登ることが難しく、ルートは稲妻型にギザギザになった。要は、山頂に向かって斜めにルート取ることで、人が登れるくらいの斜面に調整しているというわけだ。言われてみれば、遠くから眺める美しい富士山の形も、山頂に近づくにつれて斜面が急になっている気がする。「僕は今まさにそこに立っているということか」と妙に納得した。
この頃になるとYにも疲れが見え始め、ギザギザの折り返しの度に小休止を挟んだ。その小まめな小休止のおかげで、僕もそれなりに乳酸を感じたけれど、ギリ息が上がらないくらいの運動で、筋肉からの悲鳴も感じなかった。登った分だけちゃんと気温も低くなっていき、ワークマンの雨合羽を羽織った。八合目くらいからは、深い霧に飲まれて、10m先が見えるか見えないか、くらいでずーっと登っていたから、特段の感想がない。登山を楽しむという気分もなく、ひたすら足を運ぶ作業。ランニングマシーンを走るのと大差ない。雨合羽のおかげで、霧で濡れるということはなかったのは良かった。やっぱり推奨道具は持っていくべきなのだ。登山経験者曰く、そこくらいから段々渋滞が始まるらしかったけれど、ありがたいことに道はスカスカだった。月曜日、有給をとった甲斐がある。
霧のせいで下も見通せず、「どれだけ登ってきたか?」の達成感も味わえないまま、気がつけば須走ルート山頂に着いた。石の柱が地面に刺さっていて、“山頂的”な言葉が彫ってあった。近くにいた日本人に頼んで、Yと一緒に写真を撮っておいた。例によって、霧のせいで、石の柱と僕らしか写っていない写真だけど。