第728回:復帰戦もしくは引退試合②
新千歳空港に着陸したのが18時半頃で、ホテルに着いたのは20時半頃だった。北海道はやっぱりちゃんと涼しかった。この日、東京は約30度まで気温が上がっていた中で、北海道は23~24度。実に快適な気候だ。
仕事があるから、当然だけど、前日の調整練習はなしだ。これも現役の時には考えられなかったけれど、サラリーマンに染まった今の僕にとしては違和感を感じることもなかった。ちなみに僕以外のメンバーは、半分くらい柔道=仕事の立ち位置の人たちだから、この日早めに現地入りして調整練習をしていた。心強かった。
ホテルに着いてすぐ、チームのメンバーと合流してご飯を食べに行った。ご飯を食べながら、話題は当然翌日の相手の情報や試合展開について。とりあえず「この選手知ってる?」から入って、組手(右or左)と得意技なんかを共有する。誰も知らない場合は、出身校なんかから、知っていそうな後輩に電話したりして調査した。YouTubeに過去の試合映像が上がっている選手は、それをみんなで見たりして研究した。「こう攻めればいい」とか「ここは守って引き分けでしょ」とか色々と話すのだけれど、みんながみんな“今の自分がどこまで動けるのか”が、(悪い意味で)未知数で、果たして本当にこの戦略でいいの・・・という終始フワフワした作戦会議だった。楽しかった。
実際にオーダーが出て、こんな作戦会議をしていると、「やばい、緊張してきた」なんて言いだす奴も出てくる。僕としては、緊張するほど準備してきていないしなぁ・・・心の底から、負けて当然、勝ったら儲けもの、のメンタルになっていたから、緊張は感じなかったけれど、怪我だけはしたくないな、という少し方向性の違う恐怖感だけ感じていた。
22時頃に作戦会議は切り上げて、ホテルに帰る前にコンビニに寄った。次の日の間食用のエナジードリンクや菓子パン、和菓子なんかの買い出しだ。半分悪ノリで、1,500円もする“ユンケル”を買っている奴もいて、「気合い入ってんなぁ」と感心した。僕は遠慮気味にウイダーinゼリーを2個だけ買っておいた。