第73回:金のたまねぎ
先週24日から26日まで日本武道館で全日本学生大会(団体)があった。我々慶応大学は3回戦で駒澤大学に負け、3日目に進むことは出来なかった。最終日に応援に来ていた相模のボスに制服姿で挨拶に行くと、「 今日出ないのか、寂しいな~ 」 なんて言われる。俺だって寂しいよ、と心の中で思う。
やっぱり慶應と一部校の間には少し差があるようだ。「 壁 」 って程どうしようもなく大きな差な訳じゃない。けど、なかなか超えられないちょっとした 「 段差 」 のようなものが確かにあるようだ。上がろうとして何回も足を出すんだけどあと少しの所でつま先が引っかかってしまう。そんな感じでこの2年間、僕らはもう3回足踏みしている。この先、そう何度もチャンスが巡ってくるわけじゃない。そろそろ一段上がって次のステージに進まなくてはならない。この世界 “ それぞれがOnly One ” なんて甘っちょろいことは言ってられない。人の上に立たなきゃ見えない景色があるのだ。9月の東京学生個人戦、何としても尼崎に行こう。
結局、東海大が今年も全日本を制した。決勝の相手はやっぱり国士舘大学。両校とも7人中6人がそれぞれ相模、国士舘高校の出身者。俺にとって懐かしのメンバーが懐かしの雰囲気の中で戦った。オーダーが出た時は国士舘有利かとみえた。案の定5人目まで2-1でリードされ、こりゃ今年は危ないかと思った。しかしここからしっかり龍之介が取り返して大将戦で海帆先輩が逆転した。意味が分からないほど凄い試合だった。上手い形容詞が思い浮かばない。とにかく凄かった。いつものように鳥肌がたった。少しだけ泣けた。
決勝中、2階の応援席から必死で応援した。どうしても東海に勝って欲しかったから、自然と本気の声が出る。でもいざ試合が終わってみると自分は一人。「 ありがとう 」 って海帆先輩と握手することも、「 流石です 」 って龍之介と笑いあうことも無い。かつてはゲロ吐きそうな緊張や、報われた幸せ、その真っ只中にいた。でも今はいない。それが寂しい。
もちろん慶應でしか出来ないことはたくさんある。でもあの瞬間だけは、2階応援席にいて、嫉妬のような悔しさのような気持ちを覚えないわけにはいかなかった。絶対に自分も成功してやろうと思った。何でも良いけど、いつか彼らに負けないくらい大きいことをしてやろうと思った。
国士舘にしてみれば、高校大学ともう何回東海に持って行かれたか分からない。万全の準備で、万全のメンバーで、完璧なオーダーで、今回こそはと臨んだに違いない。俺はいつも東海側から見るから実際に感じたことは無いけど、国士舘にとって東海は間違いなく、とてつもない 「 壁 」 なんだろう。最後、車で正面玄関前を通り過ぎる時、国士舘のメンバーがガックリとうつむいているのが見えた。どっちの気持ちも分かるから、何とも言えない心情で日本武道館を後にする。
たまねぎや つわものどもが 夢のあと・・・
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳