第28回:ちょっと待て!

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 この時期、世間で一番やかましいのはやっぱり高校野球だ。これにはどうしても納得できない。もちろんその道で、アスリートとして、一生懸命努力して、一流になった人たちは尊敬する。好きで応援している人ももちろん良い。でも、本来全ての部活を平等に扱うべき ( と思う ) 立場の学校の差別には本当に腹が立つ。メディアの立場は理解できるが、高校スポーツの扱い方としてやっぱり腹が立つ。

 7月30日、母校東海大相模高校の野球部が33年ぶり夏の甲子園出場が決まった。神奈川県決勝戦には全校生徒が応援に行っていた。何しろ行かなければ欠席扱いらしい( 柔道部は公欠。インターハイに向けて練習している。インターハイと甲子園に上下があるのか? )。俺ら柔道部だと、県大会で1、2人、東京開催の全国大会で仲の良いクラス友達や先生が20人来れば良い方かな。そのうち卒業生宅に甲子園遠征のための寄付のお願いがきたりする。柔道部は今年、予算不足で冬の遠征を一つ削ったりしてるのに。どうして柔道部の全国大会には寄付を募らないのかな?( ま、募っても集まらないんだろうけど )。 で、校長はきっと当たり前のように、色んな競技が出場するインターハイじゃなくて甲子園の応援に行くんだろうな。

 ちょうど30日夕方、相模高校の練習に参加させてもらっていた俺や他のOBが練習を終えて地上に出ると ( 道場は地下にある )、校内は甲子園出場決定取材陣やら野次馬やらでごった返していた。横断幕や旗まで飾ってある。お祭り騒ぎ。柔道部が食事をする学校の食堂は野球部の祝勝会で立ち入り禁止。柔道部の食事は適当な弁当に変更される。次の日の神奈川新聞ではもちろん彼らが一面を飾る。新聞といえば、俺らが 「 金鷲旗で優勝 」 した時の記事は、「 相模野球部が県ベスト16で惜敗 」と同じくらいの大きさ( ちょうど時期が同じだからね )。秋には、「 柔道、国体で優勝 」 が、「 春の甲子園予選の展望 」の4分の1くらいだった。

 ずいぶん愚痴ったけど、別に野球部員が嫌いなわけではない。たくさん全国制覇をした俺らの方が偉いのに、と言っているわけでもない。それから母校相模高校を批判しているのでもない。どこの高校も同じだから。色んな競技の選手が死に物狂いで頑張っているのに、野球ばかりを異常なほど騒ぎたてる世間、煽るメディア。なんだかなーーーってことだ。

慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳