第287回:不運の続き
釧路合宿からの帰り、我々の不運は続くのである。
11日の帰り便が、今度は濃霧で離陸できないと言い出したのだ。それも、預けた荷物は全て積み込み、我々も一度飛行機に搭乗した状態からの「頑張ってみたけどやっぱ飛べないから降りて」のアナウンス。前日夜あまり眠れていなかった僕は、搭乗直後に眠りに落ち、熟睡して目を覚ますと飛行機が地に足を付けてた。もう羽田に着いたのかな?と思ったらまだ離陸していなかったショックを抱え、いったん降りてターミナルで待ちぼうけすることになる。当初14時離陸予定の中、最悪19時まで様子を見るとのこと。19時までに霧が晴れれば飛ぶし、19時になってもダメだったら欠航という意味だ。そんな時間まで待てないからもう諦めるという人は、個別に荷物を降ろしてもらって空港から退散してくれと言う。僕たちも旅行会社の人に連絡をとって相談する。「今晩泊まるホテルは取れる。しかし明日の東京直行便が既に満席。だから明日にする場合は札幌空港経由で帰ることになるが、全員分まとめて同じ便のチケットは取れなさそうなので、2グループくらいに分かれて帰ってもらう」と旅行社。それはなかなか面倒くさい。でもどうせ明日に延期になるのなら、19時までターミナルで待つのはバカバカしいからさっさとホテルに戻ってゆっくりしたい。非常に難しい選択である。緊急チームミーティングの結果、今日帰れることに望みをかけて、そのまま待機することになる。
霧はいっこう晴れる気配なく、僕らの後に離陸を予定していた便はどんどん欠航になっていく。我々の便は既に荷物を積んでいるため、簡単には欠航判断を下せない。正に宙ぶらりんの状態。どうしようもなく暇な僕らは、思い付きでトランプなんか買っちゃって、5人くらいでババ抜きを始める。最初は早く帰りたい気持ちに振られダラダラやっていたこれも、みんな次第に持ち前の負けず嫌いな性格に火がついて、気が付けば大熱戦である。下らないことを全力でプレーできる僕らの幼稚さが可愛い。やたら厳ついスーツ姿の男たちがチマチマしたトランプで一喜一憂しているのが面白いらしく、僕らの周囲にちょっとした観客が付き始める。もちろん彼らは赤の他人であるが、普段そうは起こらない不運を共有した乗客たちに微かな仲間意識みたいなものが芽生えているから不思議である。
結局18時頃、僕らの飛行機は飛んだ。トランプのお蔭でイライラも無くなり「良かった良かった」と非常に和んだ気持ちで帰路に就く。すっかりババ抜きにはまってしまった一行は飛行機に乗っている最中も戦い続け、あっという間の羽田であった。
それでも家に着いた頃にはもう10時を回っていて、疲れがどっと表面に出てくる。次の日が“体育の日”で一日オフなのがありがたい。それにしても今回の釧路はついてなかったな~、なんて考えながら眠りに就いた。
慶應義塾大学 総合政策学部 藤井 岳