第99回:これからのAO入試(6)

対策の変化

これからのAO入試、6回目の今回は「対策の変化」を考えてみようと思います。

AO入試人口の部分で、おそらくAO対策予備校・塾は全国へと拡大し、それによってAO入試の人口も増えるだろうと予測しましたが、その中身は一体どのようになる、一体どのような指導がなされるのでしょうか? 

これを考える前に、就職活動における対策の変化をみてみようと思います。一昔前は学歴が直に就職に結びつくという観念があり、確かに対策はありましたが、大学のブランドに依存する部分が多々ありました。それはおそらく今も残っていますが、近年就職現場では「学歴ではなく、その人をしっかりと評価する」ということが言われるようになりました。ソニーが学歴を伏せて選抜を行ったという話はよく知られているものとなっています。そう「言われている」だけであり、有名大学の学生が明らかに就職活動に、相対的には困っていない現実はもちろん存在しますが、有名大学だからといって安心せず、無名大学だからといって諦めない傾向もみられるようです。 

また、AOの中でも紹介したコンピテンシー面接の考えも次第に普及していっています。そういった中で、就職活動の現場では、いかに立派なことを言うか、というよりも、いかに具体的に自らの体験をアピールできるかが問われるようになってきました。ありきたりなことではなく、自分にしか言えないことを自己分析によって多くの大学生が見つけていっています。そしてそれはAO入試の対策にもみられるものになりました。AO入試の市場拡大により、予備校の対策が本格化し、多くの予備校で過去、現在、未来が一貫した、たとえ実績は小さくても自分にしか書くことができないことを書いていこうと指導する場所が多くなってきました。

大学の中には、評価にどのような実績どのくらい大きな実績を残したかは関係ないと明確に言うところもあります。そういった意味で現在就職活動とAO入試の対策の現場は多くの部分で一致している、AOの対策は就職活動の対策に追いついていると言えます。 

それでは、まだAO入試が就職活動の対策に追い付いていない部分があるとするならどういった部分でしょうか?就職活動に取り組む多くの学生が行いながらも、AOを受験する大抵の受験生は行っていないこと。それは「インターン」です。近年の規制緩和により、大学生が多くの場合無報酬で企業の職業体験を行う「インターン」という制度が大学には浸透してきました。就職する前にあらかじめ体験することでよりより就職先の選択ができるようになる・・・それが当初の目的だったのかもしれませんが、今では建前となり、実際には早い段階からの企業の学生囲い込み、企業広報、あるいはインターンという名の無料アルバイトを行わせているという面があります。

多くの大学生が目星をつけている企業のインターンには参加するようになり、それまで早くても秋頃からだった就職活動が、夏ごろから実質的に行われているようにもなっています。就職活動といっても具体的にアピールすることがサークル活動くらいしかない・・・そういった大学生がこれまでのサークルでの体験にインターンを上乗せしようという現象もみられます。それをAO入試で考えてみるとどうなるでしょうか?

※100回で終わりと言っていましたが、年内は続けます。                             

次回へ続く


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