第100回:これからのAO入試(7)

前回の続きです。) 

インターンをAO入試で考える。実際には大学の中で就職活動のインターンに当たるものはないため、完全に何かに当てはめることはできません。が、現在でも似たような事例はいくつか見られます。 

早慶MARCHの中から見てみます。現在はありませんが、中央大学総合政策学部が以前とっていたAS方式は、

エントリー→課題論文提出→アドミッションセミナー(ディスカッションン、プレゼンテーション、レポートなど)→小論文・面接(ここから通常の自己推薦入試と同じ扱い)→合格発表

といったように、小論文、面接の試験の前に大学が実施するアドミッションセミナーに参加することで、自己推薦入試に進むことができるという、大学教育が入試を通じてやや高校教育に入っているものでした。 

また、慶應SFCも高校生向けにバイオ研究のスクールを実施しており、そのプログラムに参加した人の多くがSFCを受験し合格する人もいます。早慶MARCHでいうとこのくらいですが、東北大学で高大連携のプログラムも実施されているなど、高校と大学が結びついて教育を実施していこうという試みは各地で多数みられます。 

こういった取り組みがAO入試の拡大とともに多くの大学で行われるようになり、さらにそれが大学の広報、高校生の囲い込みにも結びついたならば、インターンのAO入試版が完成することでしょう。就職活動でみられるように、総合的、多面的な評価をされると言われても、実際には何をすればいいのか分からないというのが多くの人の心理です。そのため、何か分かりやすい指標を求めようとし、多くは「行きたい場所が実施する何かしらのプログラム」に参加するようになる。 

企業も大学も、自らが実施したプログラムには思い入れがあり、建前上は「採用、受験において差別しない」と言っていても、そのプログラムで良い成績を残した人を、自分の中で「差別しない」レベルにはなる範囲で正当化し、入社、入学させてしまいます。となると、分かりやすい指標を求める受験生は、そういったプログラムにいっそう参加しようとしてしまう。

こういった現象が起こることが予測できます。慶應SFCも「全ての受験生を平等に見る」とは言いながらも、上記のプログラム参加者の中から、半分程度は合格者を出しています。参加者の半分が合格するプログラムはその他にほとんどありません。 

「対策の変化」の中では、AO入試版インターンができた社会における変化を考えてみました。もしこういった状態が本当に起こったとするならば、私は逆にインターンには参加するなと指導します。「分かりやすい指標」は必ずしも「受かりやすい指標」とは全く別物です。相手から示された活動を行うのではなく、自らの将来や興味を考えた上で本当にやりたいことを極めた方が、「自らの指標」をもった方が、オリジナルティが出る分、逆に合格しやすくなるのではないでしょうか。大学側もAO入試の本来の目的を崩さないためにも、「自らの指標」を大切にする姿勢を示す必要があるのではと思います。                             

次回へ続く


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