第14回:言語学

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 こんにちは。あと一ヶ月で大学も夏休みを迎えようとしています。入学してからもう一学期が過ぎようとしているなんて……光陰矢の如し、ですね。

 さて、今回のSILS徒然コラム第14回目は、私が選択している言語学の授業についてです。私の授業は、入門科目なのでいろいろな論文を読んでいます。言語学と一口に言っても様々な分野へと分かれています。例えば、意味論や統語論などのより細かい分野です。この入門科目では、意味論とは何か、統語論とは何か、という大まかな説明から始まり、論文を通して言語学がどのように役立っているのか、どのような分野で言語学が活躍しているのかを勉強しています。

 今まで約10本の論文を読んでいますが、その中で面白いと思ったものを紹介したいと思います。その論文は、マクドナルドがある会社を訴訟した際にその裁判に関わった言語学者が書いたものです。これは、Mc”など、元々は特定のもの(McDonald’sの商品など)を示す言葉が、抽象的なもの(低価格、利便性)をさす単語として新しく機能する、という事象についてです。

 ある会社がMcSleepInnというホテルをオープンしようと思っていたところ、マクドナルドがMc”という標章はマクドナルドが登録しているので、使用するな、と訴えました。ホテル側は、Mc-という単語はスコットランド地方で古くからthrifty(節約)の意味として使われていて、ホテル名としたのは手頃な価格ということを表したかったからだ、と反論しました。そして、学者にMc”という単語がマクドナルドとは離れて使用されている(generic label)ことを証明するように頼みました。この学者は調査の結果、Mc”には低価格、シンプル、便利といった意味が込められている、と結論づけて、ホテル側を弁護しました。例えば、Mc”を使った単語にMcMansionといったものがあります。これは、安くて新築のベーシックな住宅、という意味で雑誌などで使用されています。(最近では変わってきて、狭い敷地に立てられた豪邸、という意味もあるそうですが。)結局、この裁判はマクドナルドの勝利に終わってしまったそうですが、こんなふうに言語学が裁判で使われているのか、と驚きました。

 実際、Mc”を使った単語って結構目にしますよね。他に英語のgeneric label、つまり抽象的、全体的なものをさす単語の例としては、Q-Tips(綿棒)とKleenex(ティッシュ)等です。日本語で例を出すと、宅急便。「宅急便」という単語は実はヤマト独自の用語だったそうです。でも今はgeneric labelですよね。他にも、iPodは現在MP3プレーヤーの代名詞になりつつありますし、意外に自分がよく使う単語だったりします。言語学は、普段自分が使う言語について勉強をするので、新しい発見が数多くあり、とても楽しいです♪

 今回は言語学の授業を紹介しました。次回はIntroduction to Artsという少し変わった授業を紹介したいと思います。

早稲田大学 国際教養学部 小林 綾