第141回:可笑しい看板
こんにちは。最近、社会言語学の授業で課題が出されました。それは身の回りにある看板の写真を撮って分析する、というもの。例えば、近年駅構内の看板や地域名の下にはほぼ全部に英語表記がありますよね。高田馬場駅なら韓国語表記もあります。これは新宿区に住んでいる外国人数が多いことと関係がありますし、他言語表記の増加は日本が観光業に今力を入れている証でもあります。
さてそんな課題に取り組むべく、恥を忍んで早稲田通りをデジカメ片手に闊歩していると、どんどん見つかる多言語表記の看板たち。そしてぱしゃぱしゃと取っている時に、ふと思い出したのがスペインで見かけた日本食料理屋のメニューです。そのメニューにはスペイン語、英語、日本語と3言語で表記されているのですが、このメニューを見た時には思わず抱腹絶倒でした。
画質が悪いですが、日本語表記を読むだけではよもやそれが料理名だとは誰も思わないような奇抜な名前です。「牛肉を手に入れてください」「米が曲がりくねっている」。きっとスペイン語でもともと考案した名前を翻訳ソフトで英語にし、さらにそれを日本語にしたのでしょう。こうやって見るといかに翻訳機能にミスがあるか露呈されますね。そもそもパソコンには単語を訳すことはできても、文脈を読みとるという行為はできません。読みとれないからこそ、日本語に訳した時に「牛肉を手に入れてください」という料理名が生まれてしまったのです。この写真を撮ったのは5年以上前になるので、その間に翻訳ソフトはめまぐるしい進歩を遂げ今こんなミスは起きないようになっているかもしれません(むしろ、そうであってほしいですよね)。
日本語が読めないスペイン人がこのメニューを見たらきっとこう思うでしょう。「ワーオ、このメニュー日本語表記があるからきっと本格的な和食だ」と。……ん、待てよ。もしかしたらこれと同じ事が我が身に起きているかもしれない。自分の胸に手を当てて考えてみたら、エスニックレストランでその国の言語が書いてあったら、読めないけどこのお店本場の味出してくれそうって思ったこと何度もあります。うーん、この日本食レストランの看板を見たときは笑っていたけど、もしかしたら日本国内にもこういった他の国の人が見たら笑える言語表記って意外にあるのかも……。
早稲田大学 国際教養学部(SILS) 小林 綾