第212回:春
こんにちは。この間、鎌倉や上野を訪れたら桜が咲いていました。休日だったせいか、多くの花見客で賑わっていました。もう春ですね。新しい季節の始まりです。
上野には先日始まったグレートジャーニー展のために行きました。グレートジャーニーは探検家である関野吉晴さんの人類の起源を追った旅に沿った展覧会です。このグレートジャーニーとは、アフリカ大陸から南アメリカ大陸の南端にたどり着くまでの人類の軌跡の旅を指します。関野さんは、この5万キロにもなるルートを逆から辿って旅をしています。展覧会では世界最古のミイラから、ある部族の干し首など珍しいものが展示してあります。関野さんの旅は文化人類学者の研究のように、一つの家に泊まって彼らがどんな生活をしているのかを観察し、一緒に時を過ごしながら旅をしていたようです。
驚異的だったのが東南アジアへの海の旅です。カヌーで海を旅することに決めたそうなのですが、なんとカヌーは手作り。それも何もない状態からカヌーを作りあげる、と決めて12kgの砂鉄を集めるところからスタートします。鉄を鋳てできあがった道具を使ってカヌーを完成させます。こんな探検家いないですよね。
展示室のところどころに、関野さんのメッセージや展示品の解説が書かれたプレートがあります。その中に、幸せや豊かさは国と人々によって異なると感じた、とありました。ブータンが幸せの国と謳われた時、幸せとは?というテーマがメディアなどでも取り上げられていました。その頃から、必ずしも金や名声を得ることが幸せではない、と聞くようになりました。関野さんのこのメッセージもよく聞く言葉ですが、こんな壮大な(そして、とてつもなく大変な)旅をした人の言葉だと重みと説得力があります。
自分が幸せになるために必要なものってなんだろう、と考え続けていますが、まだ答えは見つかりません。明石家さんまの言うように、うまい醤油のある家でしょうか。どんな風に生きていくのが自分にとって一番わくわくする、楽しい人生なのか。春はこれから先の未来を思って、どきどきしたり、わくわくしたり、自分の人生や幸福について想いを巡らすのに良い季節ですね。
早稲田大学 国際教養学部(SILS) 小林 綾