第62回:『告白』

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 こんにちは。週末はいよいよサークルのコンサートです。秋から留学に行くので、留学前最後の演奏会ということで気合いが入っています。今週から梅雨に入りましたね。梅雨の時期になると鎌倉の円覚寺を思い出します。ほぼ毎年、紫陽花を見に円覚寺を訪れていました。梅雨の時期は何かと鬱になってしまいますが、梅雨には梅雨なりの楽しみ方があるので終わるまでその楽しみに興じたいと思います。

 さて、今回のSILS徒然コラム第63回目は『告白』という本についてです。以前ふらっと本屋に立ち寄った時に、店頭に大きく「本屋大賞受賞作!」と書いてあるではないですか。ぬぬ!?と思ってよく見ると2009年に本屋大賞に選ばれた『告白』の文庫本が平積みにされていました。予想以上に文庫化が早かったので驚きつつ小躍り。もちろん、心の中で。ずっと読みたかったのでラッキーです。

 ちなみに私は文庫主義です。単行本のずっしりとした感じも捨てがたいですが、鞄にそっと忍ばせられる小さい文庫本の方が何かと便利で……なんて見栄を張ってしまった。本当は文庫本の方がお財布に優しいから好きです。さてさて、そんな文庫本を脇に携えスキップしつつ急いで帰宅。『告白』というと、最近TVでも街中でもよく見かける広告「ドッカ0ン、と興行収入第一位」で思い出す方もいると思いますが、松たか子さん主演で映画化されました。一体、なぜそんなにも人気なのか。気になっていたので読む前からドキドキ。読み始めたら続きが気になる気になる。授業中読みたい気持ちをぐっとこらえていました。物語は担任教師の告白から始まります。娘は事故で死んだのではない。このクラスの生徒に殺されたのだ、と。犯人は誰か、なぜ殺したのか。事件に関わる人達の告白によって物語は進められていきます。久々にこんな面白いミステリーを読みました。書店員ではないですが、一読者として皆に勧めたくなる本です。

 この作品の魅力の一つに、それぞれの告白が嘘か本当かわからないと言うことがあります。『告白』の映画監督である中島さんも言っていますが、物語は登場人物の語りか手紙によって進められます。つまり、その登場人物の主観から語られているわけです。私たち読者は登場人物の誰よりも事件について多くの情報を得ますが、その情報が嘘か真実かはわからないのです。この台詞は嘘か、犯人の本当の殺害理由はこの通りなのか。どこまでを信じ、また疑うのか。全てが読者に委ねられているところに再読したくなる衝動を覚えるのだと思います。

 本屋大賞2010も決まりましたね(だいぶ前か)。早く文庫化されないかな。それでは今週はこの辺で。また来週!

早稲田大学 国際教養学部(SILS) 小林 綾