第76回:マスキームの言葉2

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 こんにちは。最近ベーグルばかり食べているせいか顔が丸くなってきました。

 さて前回、先住民居住地で授業を受けていると書きました。今回はその授業で感じたことに着いて書きたいと思います。授業中に、ある生徒が「文字はいつ頃作られたのですか?」と質問していました。マスキームの言語で私が習っているハンカミーナムには元々文字はありませんでした。しかし、1997年にアルファベットをベースとした文字が作られたそうで今私たちはそれを利用して勉強しています。村のリーダー格である人々が集まり、約一年にわたって文字と発音、スペリングなどを議論しあい決めました。とても熱い議論だったそうです。先生が二人いるのですが、どちらも議論に参加していたようでとても良い話し合いだったわね、と言い合っていました。意見がぶつかることが多かったらしいのですが、それをとことん話し合ったため、終了した時にはみんなが満足いくものに仕上がったそうです。また、文字がつくられてから若い人も勉強しやすくなり、また他のマスキームでない私たちのような学生も勉強できるようになりました。

 世界には多くの絶滅に瀕している言語があるといわれていますが、東京に住んでいるとなんだか絶滅寸前の言語があると聞いても遠い世界のことのように思ってしまいます。しかし授業中に文字の歴史や議論の話を聞いていて「私は今その消えてしまいそうだった言語の復活に触れているんだなぁ」と感じました。そういう風に感じることができただけでも授業を選択したかいがあった気がします。留学生向けのオリエンテーションでこの言語のクラスが一番魅力的なクラスだと大学側が説明をしていました。言語をマスターすることを目的としているわけではなく、彼らの文化と言語に触れることを目的としているそうです。

 クラスには同じ年頃のマスキームの人が授業を受けています。きっと彼らは私とは全然違う視点で授業を受けているのでしょう。言語や文化が次の世代へと受け継がれていく瞬間を共有していることを不思議に思いました。言語だけでなく他にも多くの貴重な体験をくれる授業です、

 ではまた来週!

早稲田大学 国際教養学部(SILS) 小林 綾