第167回:石巻で感じたこと~庭作りのお手伝い~
私は、今回のボランティアで、一人暮らしのおばあちゃんのお庭に花や野菜を植えさせていただきました。
このお庭も、津波によって水に浸ってしまった場所です。
震災前に亡くなったご主人がきれいにしていたお庭ですが、私たちがお家に伺ったときには、雑草がたくさん生えている場所になってしまっていました。
そんなお庭に花を植えるため、雑草をとり、耕し、土を入れ、花を植える、ということを一日かけて行いました。
雑草を抜いたあと、私は、お母さんと一緒に花を選びに近くのホームセンターに向かいました。
行き帰りの車の中で、お母さんは震災当日のことを教えてくれました。
震災当日、お母さんは地震のあと娘さんと連絡をとっていて、サイレンの音が聞こえず、避難することはできませんでした。しかしどんどんやってくる水。二階に逃げると、あっという間に一階が見えないくらい水が押し寄せたといいます。
一人で暮らしているお母さんは、とっても不安だったと思います。
それからは近所の方のお家に避難。ここで近所の方とのつながりがいっそう強くなったそうです。
大変なことがあったはずなのに、お母さんは少し笑いも入れながら話してくれました。
花を選ぶときも、とても楽しそうに色を決めたりしていました。最初は花だけの予定でしたが、お母さんの意向で野菜も植えることになりました。
そうして、13種類のお花と4種類の野菜が選ばれました。
でも私はこの時、少し不安だったことがあります。それは、お母さんは普段は人見知りをする方だと聞いていたこと。私たちがいるときだけ元気で、他のときは寂しい思いをしているのではないか、と思ったのです。
花選びから帰ってきて、お母さんと一緒にお花を植えます。
一緒に植えていると、お母さんからとっても嬉しい一言がありました。
「こんなにきれいに植えてもらったら、近所の人がたくさん見に来ちゃう。私も説明できるようにならなくちゃね。」
私たちが帰ってから、一人で寂しい思いをしてしまうのではないか、と思っていたので、この花によって繋がりが生まれることに嬉しく思いました。
花を植える、ということは「花を育てる楽しみ」をお母さんに与えるだけではなく、人の繋がりまで作ってしまうんだ、と思いました。
私たちは、お母さんが近所の方々に庭のことを説明できるように、13種類の花の説明を載せた図鑑を作り、お母さんにプレゼントしました。
その図鑑を渡したときのお母さんの笑顔は、本当にキラキラしたもので、作ってよかったと心の底から思いました。
私たちが一緒に植えた花や野菜が、お母さんのこれからの繋がりをたくさん作りますように。
お母さんの笑顔を増やしますように。
写真:一枚目が元のお庭。二枚目が花でいっぱいになったお庭。
慶應義塾大学 総合政策学部 山本 峰華