第25回:プログレッシブ・ロック
プログレッシブという音楽のジャンルがある。日本では「プログレ」という名前で親しまれている。Progressiveという言葉どおり、先進的で先鋭的な音楽を目指したものだ。
ビートルズの時代から「ロックやポップスは一曲三分」というものが公式としてあった時代に、彼らが「Hey Jude」を発表したこと(これは七分もあるシングルだった。実際には七分以上あるように感じるが)ですら衝撃的なことだったのだが、プログレッシブが持つ音楽性は、あらゆる束縛を持たない。
ボーカルが一人だと思えば、コーラスのパートが入り、あるいは途中からインストゥルメンタル(ボーカル無しのことだ)に移行したり。1曲が10分を越えるのはよくあることで、曲の展開はオペラやクラシックのように千変万化し、同じメロディーをなかなか聞けない。楽器の音以上に、自然に存在する音や電子音を積極的に取り入れていて、ドラマ仕立てのような感触の音楽もある。
こうした「なんでもあり、とにかく新しく」という風土のプログレッシブ音楽を、僕は受験生のときによく聞いていた。
Power Songというのだろうか、「この曲を聴いてから/この曲と一緒に勉強を始めよう」と決めて勉強にかかるタイプの人は多いと思うのだが(間違っていたら、この記事は読まなくて結構)、僕はまさにそのタイプだった。
たとえば、元気が出る曲、やる気が出るような曲を聞きながら勉強を始めるのだが、どうしても長続きしない。
それというのも、その「Power Song」が終わってしまうと、どうしても集中力が切れた感じがするのだ。
周囲の雑音がすごく気になって、よくイヤホンをつけながら勉強をしていたが、流れてくる音楽が脳を支配してしまうので、ロックやポップスは「Power Song」には不向きだとわかった。
そんなとき、プログレ音楽に出会ったのは幸いだった。一曲が15分もするような曲を聞きながら勉強をしていると、集中力も切れず、身体のリズムを音楽に調律されているような気分になるのだ。
それからというものの、受験生時代は、クラシックかプログレッシブしか聞くことはなくなった。純粋に趣味が移り変わっていったということもある。
まあ、理想を言えば、音楽を聴いている時点で気は散っている。僕は大学生になってからほとんど音楽を聞かずに作業をするようになった。好きでやっていることなら、集中力はそもそも、切れるはずもないのだから。