第31回:砂糖は美味い

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育った環境や人種や文化が違うわけだから、食べ物には好き嫌いがあって当然だ。だが、あらゆる料理人やパティシエを黙らせる「究極の味」がある。

それは砂糖だ。糖分のことである。
生化学的に言って、「甘さ」を嫌いだと感じる人は居ない。どんな生活環境であっても、幼児のころから糖分は好ましい味として既に記憶されている。
これは、糖分が極めてエネルギー効率の高い栄養分であるからだ。砂糖はエネルギー源としては非常に好ましいものなのだ。

ただ、今でこそ大量の砂糖を安価で購入することが出来るとはいえ、一昔まえは砂糖というのは貴重品だった。まさに「世界商品」であり、「どんなに不味くて腐った食材でも食べられるようにする」魔法の調味料・黒胡椒と並んで大量の奴隷を生み出した希少品である。

そして、いくら砂糖が沢山あるからといって、それをそのまま舐めるのではすぐに「飽きる」。糖分の過剰摂取は身体にとって病気のリスクが高いということだ。
お菓子作りをしたことがある人であれば分かると思うが、ケーキや洋菓子を作るのには本当に驚くほどの砂糖を必要とする。

そこで、砂糖と一緒に他の食材も摂る。出来れば、自然に、飽きのこない形で、美味しく糖分を摂取できるような形で。ここにはじめて民族や国家や宗教による「好き嫌い」が出る。

そうして砂糖はカカオや茶と交わり、チョコレートや紅茶、お菓子として文化に定着していく。
カカオには覚醒作用の高い成分が含まれているし、お茶についても似たようなことが言える。コーヒーもそう。砂糖は産業革命に大きな影響を及ぼしたと言われている。「子供ですらビールを飲みながら職場でゆっくりとモノを作る」時代から、「砂糖とコーヒーやカカオの覚醒作用でもって工場で効率的に働き続ける市民たち」という図式が生まれたのだ。

そして、私達現代人は本当に驚くほどの砂糖を毎日摂っているというわけだ。

更新:2013-02-01 慶應義塾大学 環境情報学部 中園 翔