第36回:統計学

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ある人が、「大学は統計を学ぶところだから、大学を出たと言われても統計を学んだことがないのでは、信用出来ない」と言ったのを聞いたことがあり、なぜか印象に残っている。
もちろん、大学は統計だけを学ぶ所ではない、と僕は思っているし、大抵の人はこの言明には異を唱えるであろうが、統計学は現実社会の分析手法として極めて有用な学問であり、現代における「諸学の女王」の位置を形而上学から奪い取ったものであるとも考えている。

マーケティングや経済モデル、といったそのものズバリのジャンルでなくとも、職務として一つの案件を考えるにも、研究として何かの論旨の正当性を主張するにも、統計的分析手法は常に有効な手法として機能する。

「Aは素晴らしいということはすでにみなさんが知る通りであり、AはBでもある。CもまたBであることから、Cも素晴らしい」という三段論法が表現できることは、既知の言説の延長線上にしかない。全く新しい主張や言説を生み出すとき、その証左たりうるのが統計学の技術である。

統計学の技術といっても、「より多くの人を納得させるデータを用意する技術」と、「言説の証左として有用なデータを選別する技術」は全くの別物で、また、「意味拡散している母体から有用なデータを取得する」技術もまたひとつの技術である。

これらの全ての技術が、文明人にとって重要な技術であるということは理解に難くない。だから、僕はわりと「大学は統計を学ぶところ」というかの主張については同意できる。

更新:2013-03-22 慶應義塾大学 環境情報学部 中園 翔