立命館大学 インタビュアー 洋々代表:清水 信朗 |
[清水]
立命館大学ではAO入試でどのような学生を集めたいとお考えですか?
[川口次長]
そもそも日本の多くの私立大学では、英語・国語・選択科目(社会・数学)などの「3教科型」の入学試験を行ってきています。これによって、受験生の全面的な能力を見ることができてきたわけではありません。また、大学入試センター試験利用方式では、7科目を課した合否判定を行っている学部がありますが、それでも受験生のすべての素質を見ることができているわけではありません。しかし、日本では大学受験の形式として定着してきており、社会的にも受け入れられてきているのだと思います。一方で、そうはいっても3教科中心の入試方法だけでいいのか、という課題認識があります。大学は社会の縮図であって、社会の様々な分野・領域で活躍していくことができる人材が欲しいと考えています。そこで、いろいろな評価方法(尺度)で入学試験を課し、入学してくる学生が個性的な集団になることで、大学が活性化すると思います。そういった意味で、立命館大学では早くからスポーツや文化・芸術活動に優れた人などの特別な能力を持った人材を選抜してきました。そういう流れの中で、「学力」に依拠しないAO入試を行い、個性あふれる人を大学に迎え入れてきました。どのような方法や評価尺度で入試を行うか、という実際の運用は各学部で決める形になっています。
[ 清水 ]
各学部では試験方法を教員の方が決めるのでしょうか?
[ 川口次長 ]
試験方法や内容は、基本的に各学部の教授会が決めます。「社会で活躍する人材が欲しい」という大きな視点は同じでも学部によって欲しい個性は多少異なります。各学部の示すアドミッションポリシー(学部が求める学生像)と、出願者の人物像とを照らし合わせて合否を決定します。学部によっては、模擬授業を行いそれにともなう小論文を課す方法、フィールドワーク・演習による方法、課題作成とプレゼンテーション・面接による方法等、試験の実施内容を工夫しています。
[ 清水 ]
評価を行うのは教員の方でしょうか?
[ 川口次長 ]
立命館大学の場合、どのような入試形態であっても基本的には教員が入学者の選抜を行います。AO入試においても、評価項目・合否ライン等を学部の教授会が設定し、総合的・客観的に判定するような仕組みがあります。
[ 清水 ]
書類の選考から教員の方が行うのでしょうか?
[ 川口次長 ]
「入試要項」に定める出願要件を満たしているかどうか等の基礎的な部分の確認や点検は事務局でも行います。また、立命館アジア太平洋大学では教員と職員(職制)が共同で評価・選考も行うようにしています。
[ 清水 ]
他の大学では学部毎独自の動きで試験を決めているようなところが多い中、立命館大学の場合は大学全体で足並みをそろえて動いているように見えます。何か全学的な方針みたいなものがあるのでしょうか?
[ 川口次長 ]
入学センターが事務局を担う全学委員会である「入学試験委員会」と「入学政策委員会」とがあり、各学部や関係部門から参加してもらっています。ここで出願動向や他大学の競合状況をもとに次年度以降の入試日程や方法を検討します。複雑になってきた入試制度を整理する可能性等も含めて検討しています。最終的な方法を決めるのは各学部になりますが全体としての方針はここで共有されます。受験生の数についても絶対数を多く確保するのがいいのか、質を重視すべきなのか、といった議論も出ます。2011年度の入試については2009年度中に検討を開始します。
[ 清水 ]
AO入試を批判する声もありますがどうお考えですか?
[ 川口次長 ]
AO入試で入った学生の成績が揮わないということでAO入試を否定する大学もありますが、これは本末転倒だと思います。もともと学力以外の多様な能力を評価して入学を受け入れたのに正課授業の成績だけで評価するのは矛盾があると思います。
[ 清水 ]
立命館大学ではAO入試をどのように位置づけていますか?
[ 川口次長 ]
立命館大学では定員の5割を一般の学力入試、3割をAO入試を含む特別入試、2割を附属校からの進学で確保したいと考えています。2012年以降、附属校から2割というのは達成できる見込みです。実は、3割を特別入試でというのはすでに達成できています。この3割の中をどのような割合にするかは今検討中です。どのようなものになるのかは、今後の議論を待たねばなりませんが、たとえば、より多くの生徒を大学が主導権をもって選抜する、ということを重視した場合は、「指定校推薦」については減らすことも視野に入るかもしれません。一方、その場合はAO入試については増やす方向になるでしょう。特別入試全体を広義のAO入試と位置づけて、様々な方式の入試を再編・統合していく方向で検討していきます。
[ 清水 ]
それぞれの方式の入試で実際に入学した方のフォローアップはどのようにされていますか?
[ 川口次長 ]
それぞれの入試方式で入った学生について、あくまでも参考値として大学に入ってからの成績(GPA)の調査を行っています。入試方式によって多少の差はありますが、これまでのところ想定の範囲内です。ただ、GPAだけでは社会に出てから必要な能力が測れません。そういった評価をどのように行うかが次の課題です。それによって、学生がより輝けるように動機付けできるようにしなければなりません。たとえばAO入試のときに輝いていた人が卒業した時に輝いていないとしたら、それは本人よりもむしろ大学に責任があると考えます。
[ 清水 ]
AO入試等の特別入試で入った学生にはどのようなことを求めますか?
[ 川口次長 ]
様々な形式で入試を行うのは大学の活力を高めたいからです。受験生には大学にどのように貢献できるかという視点を持ってもらいたいと思います。どのような学生を求めるかは学部によって異なる部分もありますが、私学は「多様性が命」と考えています。
[ 清水 ]
最後に立命館大学の受験生に向けてのメッセージをお願いします。
[ 川口次長 ]
立命館大学は改革のフロントランナーと自負しています。今後もチャレンジングにいろいろ変えていきたいですし、イノベイティブに考えていきたいと思っています。そういった未来志向型の大学づくりの一端を担ってくれるような個性豊かな人にどんどん来て頂ければと思います。
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