以前AO入試と呼ばれていた入試は2021年度入試から文部科学省の区分で総合型選抜という名称で整理されました。9~12月に実施・合否が出ることが多いことから近年は新聞等各メディアで「年内入試」の一つとして取り上げられることも多くなっています。各大学の試験の名称としては今でも「AO入試」が残っているところも多いですが、正式な区分としては「総合型選抜」になります。また、「自己推薦入試」や「自由選抜入試」等、異なる名称を使用している大学もありますがこれらも「総合型選抜」に区分されます。このページではこれらをまとめて総合型選抜として、それらがどのような入試なのか、紹介します。
目次
総合型選抜とは
総合型選抜はその名の通り1人1人を総合的に見る入試です。書類と面接によってその学生の個性、適性、熱意等を見極め合否を判定する入試と言えるかと思います。元々の名称のAO入試の「AO」は、Admissions Officeの略で、AO入試とは、このAdmissions Officeが統括する入学試験、というのが本来の意味でしたが、実際にはAO入試と呼ばれているときから、Admissions Officeが統括するかどうかに関係なく、学力以外のところで総合的に受験生を審査する入試のことを意味していました。慶應義塾大学法学部のFIT入試や早稲田大学創造理工学部建築学科のAO 入試(創成入試)は総合型選抜に分類されます。
ちなみに文部科学省では総合型選抜を以下のように定義しています。
詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって,入学志願者の能力・適性や学習に対する意欲,目的意識等を総合的に評価・判定する入試方法(令和5年度大学入学者選抜実施要項より)
さらに、「この方法による場合は,以下の点に留意する」として、以下のような旨の3項目を挙げています。
- 入学志願者自らの意志で出願できる公募制という性格に鑑み、入学志願者本人の記載する資料を積極的に活用する。
- 総合型選抜の趣旨に鑑み、合否判定に当たっては、入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価・判定する。
- 大学教育を受けるために必要な知識・技能,思考力・判断力・表現力等も適切に評価するため、調査書等の出願書類だけではなく、小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績、等、または、大学入学共通テストのうち少なくとも一つを必ず活用する。
具体的な入試の形は大学ごとに異なりますが、出願書類で1次審査を行い、1次を通過した人だけが2次審査に進み、小論文や面接の試験を受ける、という二段階選抜が多くなっています。ただし、すべての受験生が試験を受ける方式のものもあります。
総合型選抜の特徴
- 現役生だけでなく、浪人生も出願可能な大学が多い
- 一般に、出願時期は早い(出願 9月~、合格発表 11月~)
- 学校の成績(評定平均)は問われないことも少なくない
- 併願が可能な大学が多い
※「入学を確約できる者」という条件が付いている場合であっても、実質的な拘束力がないケースもある - 志望理由書・活動報告書等の出願書類、及び、それらに基づいた面接が重視される
- 小論文が課されることが多い
- 大学によっては、学科試験が課されることもある
総合型選抜はあなたの「世界観」を見る入試制度
総合型選抜で見られているのは、端的に言うとあなたの「世界観」です。
過去に何を行ってきたか、現在の姿はどのようなものか、どんな未来図を描き、それを実現するために何を行うべきか。これを、志望理由書、プレゼンテーション、面接など、様々な方法で確かめるのが、総合型選抜の本質と言えます。
拡大する総合型選抜
令和3年度についに大学入学者数に占める一般選抜の割合は5割を切り、令和5年度においても引き続きその割合を減らしています(下図参照)。
学力というモノサシだけによらずに優秀な学生の取込みを図ろうと、1990年に慶應義塾大学総合政策・環境情報学部(SFC)にて導入されてから総合型選抜を採用する大学は増え続け私大では92%を上回る大学で実施しています。
総合型選抜拡大の背景
大学が入試形態の多様化(=一般科目入試以外の入試形態による採用枠の拡大)を進める最大の理由は、世の中が求める能力が変質してきたことにあります。
右肩上がりの経済成長を前提とした「先行きが見通せる」環境下では、その目標をいかに効率的に実行することができるか、国や会社が示す方向性に沿っていかに上手に結果を残すことができるか、というチカラ(『受信力』)が求められました。こうした社会のニーズを受けて、大学も、いかに知識を効率よく身につけてきたか、という点に力点を置いて「優秀さ」を測ろうとしてきたのです。
しかし、先行きが不透明な時代に移行したことに加え、情報技術の飛躍的な進歩により、多くの情報が誰でも簡単にインターネットを通じて得られるようになりました。こうした世の中では、いかにたくさん知識を持っているか、ということ以上に、「世の中をどう見るか」「見た世の中の中で自分をどのように活かすか」ということを自分で見つけ出すチカラ(『発信力』)が重要となります。総合型選抜が拡大してきた理由はここにあるのです。
総合型選抜の選考イメージ
総合型選抜の選考プロセスは大学・学部により様々ですが、下の図のように一次選考で書類審査、二次選考で面接や小論文を課すというのがオーソドックスな形となっています。
ただし、書類審査の内容や二次選考の内容は大学・学部・方式によって大きく異なります。
書類については志望理由書を課すところが多いですが字数は500字程度のところから2000字程度のところまであります。志望理由書以外にも自己推薦書、活動報告書、といった書類の提出を必須とするところもあれば、第三者による評価書や推薦状を求めるところもあります。たとえば建築学科であればこれまでの自身の作品をまとめたポートフォリオのような書類を提出させるところもあります。
2次選考の内容もシンプルに面接だけのところもあれば小論文をはじめとする筆記試験を同日に課すところもあります。面接は10分程度のこともあれば40分から50分程度かけるところまであります。面接の一部としてプレゼンテーションを課す場合があったり、面接の代わりにグループ討論を実施するところもあります。小論文についても各大学学部ごとに課される内容は様々です。時間、字数が異なるのはもちろん、内容についても一概に「小論文」と括れないほど様々で、英語の読解や漢字の書き取り、数学のような問題が含まれていることもあります。小論文とは別に英語や数学の科目試験や複数の科目からなる総合問題のような試験を課すところもあります。
総合型選抜の対策は出来るのか
―「準備の方法が分からない」「何を見られているのか分からない」「ありのままを出せばいいはず」
総合型選抜は一芸入試ではない、ということは、随分世の中に理解されてきたとは言え、いまだに総合型選抜を志す学生から聞こえてくる声です。確かに、「推薦型」の入試は、知識の量を問う試験ではありません。しかしながら、あくまでも大学入試の一形態である、という側面を忘れてはいけません。
大学はどのような人材を欲しいと思っているのでしょうか。確かに環境は大きく変化し、社会で求められる力は変わりましたが、「将来、世の中で活躍できる人材を育成する」という大学の根本的な使命は変わりません。総合型選抜は、来るべき「不透明な時代」を見据え、そこで活躍できる人材を各大学なりに定義し、その定義にそって将来性のある人材を取ろうとしている入試なのです。
その意味で、表面的な対策は全く意味がありません。過去を見つめ、現在を総括し、世の中に必要とされる将来を描く。これを徹底的に行うことだけが、合格に近づく唯一の王道と言っても過言ではありません。
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