第3回:寺と宇宙

未分類

地震から二週間たった今だ、被災地から300km離れた東京でもまだまだ混乱が続いている。我が家も母親は家族の心配をしてここぞとばかり色々なものを買い貯めた。(笑 そして先日、ついに父親の宣言により京都に疎開までするという事態に陥る・・・ 現在京都の友人宅でまったり中。

せっかく(?)京都に来たので寺社巡りをして来たのだが、清水寺にて非常に貴重な体験をしたので書き記しておこう。

バスを降りてお土産屋や美味しそうなカフェを横目にみながら長い坂を登り切ると、清水の舞台で有名なその寺の入り口が赤い顔で出迎えた。それをくぐって更に先へ進んでいくと本堂が見えてくるが、そこで見つけた行列に思わず並んでみた。看板には「胎内巡り」と一言。取り敢えず面白そうなので100円を払い、寺にはあまり見ない地下へ入った・・・

宇宙に放りだされた。
おそらく表現としてはそれが一番近いのではないか。地下へ降りるとただただひたすら暗黒の道が続く。外部からの情報は手に触れる手すりと後ろに続く人の吐息。後はひたすら内部の情報、つまり頭の中だ。様々な事が走り去る様にめぐった。そしてしばらくして気づく。そこにあったのは、闇に犯された一人の人間。目を開ければ辺りは瞬時に闇の鬼に囲まれ、足を一歩踏み込めば断崖絶壁に向けて前進し、声をあげれば四方八方を塞ぐ壁に押しつぶされる。それを一方で空中から別の人間を見る様にして観察する己の存在。
小さい頃テレビでNASAのスペースシャトル、コロンビア号が墜落したのを見た。それ以来、宇宙空間で時間も空間もない「そこ」へ放りだされる自分を想像するようになった。その自分の想像と今回の体験は奇妙なまでに酷似していたようだった・・・

外に出て、何事もなかったように日本建築でも珍しいこの巨大な懸造の建造物を拝み、おみくじで大吉を引き、写真を幾らか撮りながら、何事もなかったように・・・

早稲田大学 創造理工学部建築学科 入学予定 佐藤鴻