第17回:不安定ヒップホップ

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最近妙にハマっているhiphopアーティストグループがいる。彼らは日本人だ。3人でたらたらと楽しそうに音楽作りをしている。板橋区出身の幼なじみ組らしい。ひとりはオタク系、ひとりはオラオラ系、ひとりはクレイジー系。変な外見とそれに負けないリリックとビートを持っている。「PSG」という。

「俺の感覚としては『ピタゴラスイッチ』の連鎖装置みたいな、やってることは超複雑だけど見栄えは超気持ち良いみたいな。そこを目指したかな。だから、赤ちゃんとかが喜んでくれたら嬉しいっすね。」

自身の音楽についてそう語るメンバーのひとりのコトバが心から離れない。彼らの最も興味深い点はこのような「深み」と「浅さ」の対局する要素を目の前に同時に提案できるところだ。矛盾が持つもどかしさや心地良さ、どうしようもない真実味を帯びるその音楽に自分はとことん魅了されているようだ。

「ふざけてる風だけどフロウによってカッコ良く聴かせるとか、ナメてる風だけど甘く見てるとドキッとさせるようなリリックってのはあるかもしれないですね。そういうギャップが好きなのかも。これはたぶん『そんな力入れなくてもこれだけいけるんだよね』っていうか……『無理しなくても普通に自分のやりたいことやればいいじゃん』っていうか。言葉にするのは難しいけどそんな意識でやってます。」

彼らのこんなスタイルはこのようないわば「ギャップ間の行き来」で成り立っているように思う。例えば、AとBがギャップを持ち存在するとする。AにとってはBが目新しいし、BにとってはAが新しい。そしてAとBは互いに「無い物欲しさ」によって興味を持つだろう。彼らの音楽にもこれが当てはまる。ふざけてると思って聴いていると急にそれは格好良くなり、格好良いと思い始めた頃にやっぱりふざけてるんだと思い返す。そんなバランスが取れそうで取れない「行き来」するような不安定状態を聞き手に与えるのが彼らの魅力だ。不安定な状態は常にそこに何かアクションが起きているということを意味する。めまぐるしいアクションに人は惹きつけられることが多い。死んだように落ち着いて何もアクションのない「無」のような状態に人は興味を持たないだろう。そんなことがPSGの音楽を聴きながら頭をよぎった。自分もギャップ間を自由自在に行き来できるようになって、人や物事をラディカルに動かせる人間になっていきたいと改めて確認した瞬間だ。

更新:2011-07-13
早稲田大学 創造理工学部建築学科 佐藤鴻