第30回:苦悩の相談

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そういえば。
最近やたらと友人の相談を受ける。なんだ自分は負のオーラを引きつけているのか、と思い詰めるほどやたらと受けるのだ。恋愛や仲違い、他人との関係など人間関係に関する相談が割と多い。将来のことや各自の持つ専門的な悩み、学校事情などアカデミックなこともある。受験や部活、学校生活などについて後輩から聞かれる事もあったり。各自が個人的にやっている仕事や活動について助言を求められる事もあったりなかったり・・・。

『我々は苦悩を徹頭徹尾経験することによってのみ、苦悩を癒される。』
作家:マルセル・プルースト

フランスの作家、マルセル・プルーストの言葉だ。30代から死の直前まで大作『失われた時を求めて』を書き続けた人で、カフカなどと並列して語られる20世紀の代表的作家だ。彼が言う「苦悩のための苦悩」という意味の言葉には共鳴するものがある。苦悩が耐えない人間の性をぼんやりと実感する次第だ。(…)しかし、他人のなんともネガティブなオーラにさらされながらも「他人の苦悩を聞く事ほど面白いことはない」と思う自分に多少の戸惑いを感じたりしている。そんな事を思いながらその苦悩に対して何かテキトウな事を言ってみるのだが、その「テキトウ」なコトバへの彼らの反応が僕を思わぬ所にいざなう。それはFacebookが常に念頭に置く「友人は他人に勝る」という事実だ。彼らが提案する「Open graph」はそれを体現している。これに関してとても分かりやすい解説をテクノロジー系ウェブサイトTechWaveの記事を引用して紹介する。

『米Facebookの新戦略がどのように世の中をソーシャル化していくのを理解するために、先に少しばかり技術的なことを解説しようと思う。最近ではIT業界内でほとんど一般的に使われるようになったソーシャルグラフという言葉。人間関係のデータという意味で使われることが多いが、もともとはFacebook上のユーザー同士のつながりを示すグラフという意味で使われ始めた。この人間関係のつながりを広く一般の事象にまで広げたのが、昨年の開発者会議「f8」で発表されたオープングラフだ。ウェブ上に散りばめられた「いいね!」ボタンを押すことで、「〇〇さんが『いいね!』と言っています」というメッセージがFacebook上に表示される仕組みだ。人間同士のつながりだけでなく、「いいね!」することでモノとの関係のデータもグラフの中に取り込むことができるようになったのだ。』
TechWave(http://techwave.jp/archives/51702338.html)

友人が好むものは他人(広告など)から奨められるものよりもインパクトがあるということだ。これはこれまで重点を置かれてきた「信憑性」の問題とは別の角度の話である。人がものごとを受け入れたり反発したりする行為は、要は対象との「距離感」に左右されているのだ。だからその内容は最低限の充実度で良いらしい。例えば、相談をされて返事をするときと、ツイッター上で誰かの悩みに返事をするときと、その反応はたいていの場合異なる。つまり「招かれざる客」ということだ。人は常に真実に触れていたい訳ではない。映画や本は実話だけでなくフィクションも見たいのだ。

(つづく)

更新:2011-10-24
早稲田大学 創造理工学部建築学科 佐藤鴻