第31回:ままならさへのまなざし

未分類


■『整理整頓というのは、モノに「正しい位置」とか「ラベル」とかを与えて、すぐに取り出せるようにすることだろう。ファイルシステムと同じだ。ということは、将来、モノが検索でピュッと出てくるようになれば、誰も片付けなくなるということか。ぐちゃぐちゃで便利な未来…』
慶應義塾大学教授/ デザイナー:山中俊治

ドン・キホーテという店がある。「コンビニエンス+ディスカウント+アミューズメントの三位一体を店舗コンセプトとする総合ディスカウントストア」とHPにある通りの何でも屋さんである。この万屋のスゴいところは「便利=高い」という従来の構造を打ち破ったところにある。しかしこれは表層にすぎない。この商店が本当の意味でスゴい理由はもっと深いところにある。それこそが第三のコンセプト、「娯楽」の存在だ。ドン・キホーテはこの項目を半ば無理やり挿入してきた。前2項とは全く違う次元の項目。この一見合理的でない項目の追加が、雑多の象徴のようなこの商店が成功した理由と言ってもいい。


■『我々は日々ままならなさと格闘している。』
写真家:大山 顕

全ての事物が成立している過程では、必ず理不尽さや矛盾などの解決できないものが含まれる。この「ままならさ」の存在こそが事物の成立にとって重要と言えるが、これはあくまで結果的にそこに現れた現象だ。普通は自然発生するこの現象を意図的に再現してうまく事業に組み込んだのがこのドン・キホーテの「娯楽」であり、これが全てを支えていると言っても良いほどであると僕は思っている。

ここで僕が良いたいこと。
それは理不尽さというのは解決そして解消するものではなく、僕らが「逃げない姿勢を取り続け無ければならないもの」だということ。先で述べたように理不尽や矛盾はどこにでも存在し、これがあることで事物の本当の意味での成立がある。つまり理不尽さとは「対決」するのではなく「共存」を図るべきものだと言える。 そこで僕たちが持たなければならないのは、いわゆる「ポジティブ・○○○」というやつだ。

(つづく)

更新:2011-11-15
早稲田大学 創造理工学部建築学科 佐藤鴻