第7回:やりたいことの見つけ方

 第7回となりました、新しい大学選択。今までは「何故、大学へ行くのか?」をテーマに実際に大学教育の最前線におられる教授の方々へのインタビューを行ってきましたが、今月号からは、第2部として、「高校生のうちに知っておきたかったこと」をテーマに、記事を書いていこうと思います。

やりたいことの見つけ方

 特に理系の学部へ進む学生にとって、大学選択は、ある程度将来の職業を決めてしまう大きな要素となります。そのため、大学生の就職活動生よりも将来について「何になりたいか?」を考えることが高校生にも求められていますが、忙しい受験勉強の陰に隠れながら、あるいは何か遠い将来のこととして直視せずに、多くの人が日々を過ごされているのではないでしょうか?今回は、私が高校生のうちに知っておきたかった「やりたいことの見つけ方」に関して述べていこうと思います。しかしながら、就職活動さえも再来年に控えている身の私が「やりたいことの見つけ方」に関して言える立場ではありません。他の人の言葉を引用しつつ、これを読まれている方と一緒に答えを見つけていきたいと思います。

 そもそも働いてみないと好きなことは見つからないのではないだろうか。働いてみると、嫌いだと思っていた仕事が好きになったり、好きだと思っていた仕事がそうでもなくなったりするのではないだろうか。働かずに好きな仕事を見つけようとするのは、まさに畳の上の水泳である。まずは水の中に飛び込まないと何も始まらないのである。         (三浦展 「仕事をしなければ、自分は見つからない」)

 この言葉は、職業体験の機会がない、あったとしてもごく一部しか垣間見ることしかできない高校生、あるいは大学生にとっても非常に酷なものであるのかもしれません。医者の仕事は結局医者を経験した人だけがどういったものか分かる、弁護士の仕事は弁護士を経験した人だけが分かる。しかしながら、経験することなしに、それらの職業を選択することを迫られるものなのです。ただ逆に言えば、やりたいことを決めるというのは所詮そういったもの。ある程度分からないまま飛び込んで、試していくものなのです。

 職業選択における姿勢は、「自分が興味のある職種があったら、その分野について徹底的に調べ上げ、その仕事に従事する人々に会って、実情を尋ねてみる」ということである。だからガイドブックだけで「よし、この仕事に進むぞ」と考えるのは、いささか危険かもしれない。                 (本多信一 「これから伸びる職業510」)

経験することなしに職業選択を行う場合、やはりこういった姿勢が必要なのでしょう。簡単なテストで「~学部に向いている」という診断する本もたまにありますが、あくまでも参考程度にしてください。また、職業選択する際に、インターンに行ったことがあるから、親がやっているからなんとなくそれでいこうと思うのも非常にもったいないことだと思います。あまり聞かない分野の職業も、少し首を突っ込んでみるだけで、思わぬ自分の興味が見えてくるのかもしれません。

サラリーマン・OLを人生の選択肢から除外して考えることは、今の時代、普遍的なシュミレーションではないだろうか。さらに、「もし商売をやるんだったら、自分はどんな商売をしたいか」「もし店をやるんだったら、自分は何を売りたいか」「もし会社をおこすのだったら、自分はどういう会社を作りたいのか」と考えることは、自分が何をやりたいのかを鮮明にしてくれる。               (村上龍「13歳のハローワーク」)

綿密な職業の調査の前には、何故自分がその職業を選ぶのかということが大切となってきます。「世の中を知りたいからマスコミ関係」「国・地方を支えたいから公務員」と、一概に考えることは少し危険で、電機メーカーの中からも世の中を知ることができるし、私立高校の教師も国・地方を支えている重要な要素と言えます。まず、自分が一から職業を創る、起業していくとしたら、どういったことをするか?これを考えると、自分は実際、「どういった世の中を知りたいのか?」「どのように支えたいのか?」がよく分かるようになり、同時にそれがどの職業につけば実現できるのかがより発見しやすくなることでしょう。

将来やるべきことは「好きなこと」「能力のあること」「マーケットのあること」これらの集合部分で選ぶべきである。

(牧充兼「慶應SFCアントレプレナー概論2最終授業より」)

 具体的にどういったことを実践していきたいのか、これを考える時に、非常に分かりやすいのが、私が受けた授業の中で紹介されたこの言葉でした。好きなことをやるだけではお金はもらえず、やっていることにマーケットがある、お金がもらえるようなことを選ばなければなりません。また、例えマーケットがあったとしても、自分自身にそれを行う能力がなければ、もちろん仕事として認めてもらえません。一から職業を創る気持ちで考えていくことは大切ですが、ただ好きというだけではなく、この三つの基準を含めて考慮していく必要があります。

 私の場合、やりたいことは、人に引き出され、導かれして、初めて見つかっていった。やりたいことは、人とのつながりの中に見つけていくしかない。

(山田ズーニー「大人の進路教室」)

 これは特に、何かしらの職業に就くというよりも、本当に自分で起業していく、また職業に就いた中で、何かしら新しいビジネスを始めていく時に必要となる言葉です。さきほど「マーケットのあること」をやりたいことを選ぶ時の条件として挙げましたが、実際に新たなビジネスを始める時は、それらは顧客や会社の人とのつながりの中で、形を変えていきます。ズーニーさんは、人とのつながりの中に見つけていくためにも、「いま、わき起こってくる、感情や想い、アイデアや考えを、なんとか形にして、なんとか目の前にいる一人の人に通じさせようと思うこと、思ってとにかくやってみること、やりつづけること」が必要であるとも結んでいます。

 そもそも、やりたいことがない、っていうのは、本当にそんなにダメなことなんだろうか。私は、そうは思わない。やりたいことなんてなくてもいい。むしろないほうがいいとすら思っている。あんまり今の自分のやりたいことに凝り固まってしまうと、自分もまだ知らない、本当の自分のやりたいことを、見のがしてしまう。

(玄田有史「ニート」)

 最後はこの言葉でしめます。人はやりたいことを見つけなさいと言われますが、やりたいことなどそう簡単に見つかるはずもありません。やりたいことは何かを見つけていこうという姿勢を忘れず、「やりたいことがない」という状況を、ダメな状況としてとらえるのではなく、可能性のある状況であるととらえていくこともまた必要であり、常に何かしらの「やりたいこと」を持つべきだと考えてしまっていると、本当に自分がやりたいこと以外に凝り固まってしまうのかもしれません。

 今回は、戸田智弘さんの「働く理由」という本をベースに言葉を紹介していきました。結局のところ、いつまでも悩まず飛び込みつつ、かと言って今の自分を全て正しいとは思わないようにする、この姿勢が大切なんだなと思いました。この本には、今回紹介した言葉以外にもたくさんの「やりたいことの見つけ方」に関する言葉が掲載されているので気になった方は是非読んでみてください。