第89回:一年の暮れに思うこと
忘年会シーズンは、いつにも増して、たくさんの人と会う。高校時代の部活の集まりに顔を出せば、普段は滅多に現れない一期生の大先輩方(ちなみに自分は23期生)がいて、恐縮しながら一緒に稽古をする。職場の飲み会に行けば、財団の創設期に活躍されいまやレジェンドのように崇拝されている方々(昭和20年代生まれ、と仰っていた…)がいる。世代が見事に違うので、好きな音楽や芸能人の話はほとんど通じないのだけれど、同じ組織に属し、同じ経験をしたという共通点だけで、初対面にも関わらず、ぎゃーぎゃー言いながら酒を飲むことができる。日本語のはずなのに何を言っているかわからなくても、とりあえず笑顔で相槌を打ってみる。すると、お祖父ちゃんも飛び切りの笑顔になる。こういう集まりも、意外と楽しい。
一昨年「世界青年の船」事業に参加して、横のつながりが一気に広がった。同世代でも、こんなに凄いやつ、変なやつ、面白いやつがウジャウジャいる。井の中の蛙だった自分は、大海原に放り込まれた気分だった。
今年は、社会人の世界に片足だけ突っ込んでみた。役所を相手に仕事をする、財団という特殊な組織。まだまだ知らないことだらけだし、学生のくせに生意気を言ってしまったこともあったけれど、たくさんの素敵なお兄さん・お姉さんに囲まれて、毎日の仕事が楽しくてしょうがなかった。大海原もいいけど、ちょっと奥まった所にある湖もいい。湖にも、大海原を知り尽くした先輩たちがいる。そして湖だからこそ、ゆっくりと客観的に話を聞けて、大海原に出るための準備をすることができる。ドキドキとワクワクとポタポタ(=冷や汗)に満ち溢れた、最高の仕事でした。(という風に書くともう終わりみたいだけど、この仕事は1月末まで続く…。)
あれもこれもと詰め込みすぎた結果、生活の拠点はもっぱら都内になってしまい、SFCに行く機会はめっきり減って、大学の友人やゼミのみんなには一杯迷惑をかけてしまった。いまさら反省しても遅いのだけれど、「あのときもう少しうまくやりくりできていれば…」「せめて顔だけでも出せていれば…」という気持ちが、思い返すほど湧き出てきて、申し訳なさや後悔が尽きない。
仕事やコミュニティを増やすのは勝手だし、簡単。それに伴って増える人間関係まで、きちんとバランスをとりながら維持すること。忙しいときほど、一回一回の集まりを大切にして、愚直に、謙虚にどんな人とも向き合うこと。ずっと意識はしていても、なかなかできずにいる。来年の目標として、改めて心にとめておきたいと思います。
今年も一年、毎回こんな拙い文章を読んでいただいて、本当にありがとうございました。来年も、どうぞよろしくお願いします。よいお年を。
慶應義塾大学 環境情報学部 水谷晃毅